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「先に休憩入るね」注文がさばき切れない厨房から消えた店長→アルバイトだけが取り残された絶望の状況

明らかに人手が足りない厨房だった
学校行事の期間だけ稼働する給食施設で、自分はキッチン担当のアルバイトに入っていた。20代になったばかりで、料理は嫌いじゃないし、忙しさにも慣れていたつもりだった。
けれど現場は最初から、明らかに人手が足りていなかった。仕込みの量に対してフライヤーは1台、コンロも限られていて、注文が一気に入る昼のピーク時には、列が壁まで届く日もあった。
厨房の中はずっと油の匂いと湯気で、声を張らないと隣の人に伝わらない。注文票がプリンターから次々に吐き出されていく音が、ずっと耳に残った。手の空いている人など、どこにもいない。
ピーク時にミスが続くと、フロアの先輩から「これ、違うやつですよ」と返ってくる。誰かが謝り、誰かが舌打ちする。雰囲気は日に日に悪くなっていった。
それでも自分たちは、互いに目で合図しながら何とか回そうとしていた。
盛り付け担当の同期がフライヤーまで助けに来てくれて、その一瞬だけ少し息ができた。学生さんを待たせている責任だけは、誰もが背負っていたんです。
店長は普通に休憩へ消えていった
状況を分かっているはずなのに、店長は見て見ぬふりだった。
注文票が積み上がっているそのときに、平然と前掛けを外す姿を、自分は何度も見ている。
「先に休憩入るね」
そう言って、1人だけ普通に休憩へ消えていった。残されたのはアルバイトだけで、相談する相手もいない。
声を上げても、聞こえないふりをされる気配があった。
シフトの権限は店長にあって、社員は店長1人。文句を言える立場でもない。
結局、こちらはひたすら料理を作り続けるしかなかった。
手が足りない分だけ手順が雑になり、ミスが増え、フロアとの空気もぎくしゃくしていく。最悪な時間が、毎回ピークと一緒にやってきた。
店長が休憩から戻るのは、いつも山が落ち着いた頃。何事もなかったみたいに「お疲れ」と言われると、こっちは黙って頷くしかない。それでも、終わってしまえばまた次のピークが来る。
誰かが本当に倒れたら、たぶん店長はその場では困った顔をするだろう。けれど、責任の一番重いところは結局、ピンチの時に厨房に残っていた側に流れてくるのだろうと、当時の自分は薄々感じていた。
あの厨房を辞めて、もうずいぶん経つ。それでもピーク時に消えていった背中だけは、なぜかまだ覚えている。誰のために走っていたんだろうという問いだけが、何の答えも出ないまま、今も胸に残っている。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、20代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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