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「東京じゃないなら、もうどうでもいいです」地方配属を告げられた新入社員→仮雇用期間中に消えた本当の理由

配属発表の会議室で、彼の顔から表情が消えた瞬間
四月の配属発表の日、僕は会議室の壁際で、新入社員たちの様子を眺めていました。
入社三年目、OJTの補佐役として、僕も今年から新人育成に関わることになっていたのです。
名前が一人ずつ呼ばれていきます。
東京、東京、横浜、東京、大阪。
そして、線の細い体つきの彼の番が来ました。
「⚪︎⚪︎支店、配属」
その瞬間、彼の顔からすっと表情が抜け落ちたのを、いまでもはっきり覚えています。
面接で「絶対に東京で働きたい」と何度も語っていた、第一志望の彼。
合格通知書を握りしめて目を輝かせていた数か月前の表情と、いまの無表情が、別人のように見えました。
会議のあと、廊下でそっと声をかけました。
「気持ちの切り替え、難しいかもだけど、⚪︎⚪︎もいいとこだよ」
返ってきたのは、笑みのない、やけに平坦な声でした。
「東京じゃないなら、もうどうでもいいです」
視線は宙の一点に向いたまま、僕の方を見ようともしません。
その目の奥にある光が、僕には少し怖く感じられたのを、覚えています。
勤務中に消え、寮で物が壊れ、そして名前が消えた
異変はOJT初日から始まりました。
午前のミーティング中、机に置かれた彼のメモ帳が、白紙のまま動きません。
休憩時間になると、彼はふらりと外へ出ていきます。
戻ってくる気配はありません。
夕方、人事から内線が入りました。
「彼、勤務時間中に外出して、戻ってきてないんですけど」
翌週には、社員寮の管理人さんから連絡が入ります。
共有スペースの椅子の脚が折られていた、廊下の照明カバーが叩き割られていた、そんな話が次々と上がってきました。
無断欠席も三日連続。
誰も彼を責めず、ただ困惑だけが、職場の空気の中に静かに広がっていきます。
本人は会社で顔を合わせても、目を合わせません。
機械のように出社して、機械のように消える。
そして、ある朝の朝礼で、人事部長から短いアナウンスがありました。
「先日付で、退職となりました」
仮雇用期間中の解雇は、その会社の歴史で初めての出来事だったそうです。
静まり返ったフロアで、僕は彼の空席をじっと見つめていました。
怒りでもない、悲しみでもない、もっと深い場所で、何かが壊れてしまった人の目。
あの日の彼の平坦な声が、いまでも耳の奥に残っているのです。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、20代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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