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「お墓も含めて全部、俺ら夫婦でやるから」両親を見送った50代の私に告げられた父の遺産の話→静かに残った違和感

「お墓も含めて全部、俺ら夫婦でやるから」両親を見送った50代の私に告げられた父の遺産の話→静かに残った違和感
続けざまに両親を見送って
母が亡くなったのは三年前。
父も二ヶ月前に急に逝ってしまい、私は短い期間に二度のお別れを経験することになりました。
母を見送ったときには、まだ父がいました。
父を見送ったときには、もう、頼れる人は誰もいなくなっていました。
独り身でボランティアをしながら細々と暮らしている私にとって、母が遺してくれた資産は確かな支えでした。
けれど、それも少しずつ減ってきている。
父の四十九日が済んだ頃、私は兄から正式に話があると呼ばれたのです。
静かなリビングで、兄は手元の書類を整えながら切り出しました。
「お墓も含めて全部、俺ら夫婦でやるから」
父の遺産の整理、墓守、そして家のこと。
それを兄夫婦で引き受ける、ついては今までの補助も今後はなしにしたいと。
補助がなくなることは、構わないと思いました。
私はもう五十を過ぎていますし、自分の暮らしの責任は自分で負うべきです。
ただ、心に引っかかる小さな棘があったのです。
兄夫婦の取り分と、私の取り分
兄夫婦には無職だった時期もあります。
共働きでもなく、ボーナスがあるわけでもない。それでも父の遺したものをほとんど受け取り、墓も家も任せろと言う。
私の取り分は、その三分の一から四分の一ほどでした。
私はそっと兄に尋ねてみたんです。
「でも本当に、それでいいの」
兄は少しだけ眉を寄せ、それから穏やかな声で答えました。
家のこと、墓のこと、何かあったときの備え。
一軒家は病気にも災害にも、いろいろ注ぎ込まなければならないんだと。
言っていることは、分かるんです。
私だって、自立と兄の家庭の事情はきちんと切り分けて考えています。
けれど、兄はどうやら違うらしい。
自分の家の維持と、私への配分を、地続きの一つの問題として見ている。
同じ親の元で育っても、お金との向き合い方はこんなにも違うのだなと、五十を過ぎて初めて思い知らされた瞬間でした。
「もういいわ」
そう、私は呟きました。
長く揉めるつもりも、声を荒げるつもりもなかった。
父も母も、そんな娘の姿は望まないでしょう。書類を畳んで膝に置き、私はもう一杯のお茶を、ゆっくりと飲み干しました。
静かに席を立ち、外に出ると、五月の風がやけに乾いて頬を撫でていきました。
納得したわけじゃない。けれど、納得しないと前に進めない。
そんな年齢になっていたのです。
両親を見送って残ったのは遺産ではなく、自分の足で立っていく覚悟のほうだったのかもしれません。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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