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「今日の電話当番は誰ですか?」全社リモート方針の中バックオフィスだけ出勤させられた→監視メールに残る苛立ち

全員リモートのはずが、私たちだけが出勤する朝
都内のIT系企業に勤め始めて数年、私はバックオフィスで総務まわりを担当していました。
外出自粛要請が出た春、社長から「全員リモート推奨」の方針が下りてきます。
開発部署は全員ノートパソコン持ちで、その日のうちにごっそり姿を消しました。
残されたのは、私たちバックオフィスのメンバー数人だけ。
ところが月初に配られた当番表には、毎日のように私たちの名前がずらりと並んでいたのです。
昼休みの電話当番、郵便物の回収と投函、社長へのお茶出し、応接の花の世話。
がらんとしたフロアに、ぽつんとデスクが残された私。
誰も出勤していないのに、定時の九時には鍵を開けて、消毒スプレーを片手に郵便受けを覗きに行く。
電話はめったに鳴りません。
社長は来ません。
それでも、お茶出し用の急須は毎朝洗い、応接の花瓶の水は替えるのです。
窓から差し込む光だけが妙に明るくて、無人のオフィスに自分の足音だけがこだまする日もありました。
誰のために整えているのかもよくわからないお茶のセットを並べながら、心の片隅では「これって本当に必要なんだろうか」という疑問がじわじわと膨らんでいったのです。
監視するメールと、上司の決まり文句
本当にしんどかったのは、当番中の相互監視でした。
少しでもデスクから離れていると、グループメッセージにすぐ通知が走るのです。
「今日の電話当番は誰ですか?」
差出人は、フロアに居残っている同じバックオフィスのメンバー。
トイレに立っただけでもこれが飛んできます。私は走ってデスクに戻り、画面の向こうの誰かに「席を外していました、すみません」と返信を打つのでした。
鳴っていない電話のために、監視される構図です。
たまらず、直属の課長に相談に行きました。電話は鳴っていない。社長も出勤していない。花の世話だけのために、出勤当番を続ける理由はあるのでしょうかと。
課長はマウスを動かす手も止めずに、こちらをちらりと見て答えました。
「誰か出勤しなければならないから」
それだけ。
理由ではなく、ただの結論でした。
私はそれ以上踏み込めず、自分の席に戻って、また鳴らない電話の前に座ったのです。
外出自粛が解けたあとも、当番表だけは何事もなかったように毎月配られ続けました。
電車もすいていない日に、誰のためでもない当番のために通勤する。あの時間は何だったのか、いまだに胸の奥に小さく引っかかったままなのでした。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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GLAM Lifestyle Editorial
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