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「母さんに味付け聞いてみる」もやしを和える私の隣で電話を取った夫→新婚の台所で背筋が凍った瞬間

何気ない晩ご飯と、夫の何気ない質問
結婚してまだ一年も経たない、新婚の小さな台所。
その日の晩ご飯のメニューに、私はもやしのポン酢和えを選びました。
仕事帰りに買ってきた一袋のもやしを湯がいて、ザルにあげる。湯気の立つ台所は、それなりに穏やかな夕方でした。
ポン酢を回しかけ、ごま油を少しだけ垂らし、仕上げにすりごまをぱらり。つまみ食いをして、うん、私の好きな味。
そこへ仕事から帰ってきたばかりの夫が、ネクタイを緩めながら台所を覗き込んできました。
「何作ってるの?」
夫の顔は、ただ純粋に夕飯を楽しみにしている顔です。
私は手を止めずに、いちばん分かりやすい例えで答えました。
「義実家で出てくる、もやしの和物みたいなものだよ」
そう、ちょうど先日帰省したときに、義母が小鉢で出してくれたあれを思い出していたから。
似たような家庭料理、というつもりの一言でした。
受話器を取り、義母に味付けを聞き始めた夫
すると、夫の表情がふと変わりました。
「あぁ、あれね」
うなずいた次の瞬間、夫は当たり前のような顔でスマホを取り出して、画面を一度だけ確認します。
そのまま、耳に当てたのです。
「母さんに味付け聞いてみる」
えっ、と私は手を止めました。和える直前まで仕上げていたボウルが、目の前で湯気を立てています。
私が作ろうとしていたのは、ポン酢で和えるだけの、私の家庭の味。義母の和物に「似ている」というだけで、別の料理として完成していたはずでした。
けれど夫の頭の中では、私の発した「義実家で出てくる、もやしの和物みたいなものだよ」が、いつのまにか完全に「義母の和物そのもの」へとすり替わっていたようです。
「あ、母さん?うん、いま夕飯にもやしの和物作ってもらってるんだけどさ。あれって、何で味付けしてたっけ?」
受話器の向こうから、義母の明るい声が漏れ聞こえてきます。
夫はその声をひと言ずつ私に通訳するように、こちらへ目線をくれました。
「ごま油はこれくらいで、麺つゆを少し、塩はひとつまみだって」
背筋に、すうっと冷たいものが走りました。
私が作ろうとしていた料理は、もう、私の手元にありません。
新婚の台所が、急に「義母の台所の出張所」になってしまったような気がしたのです。
マザコンという言葉が一気に頭をよぎります。
反論しようとしたら、たぶんこの夜は気まずさで終わる。
そう思った私は、湯気の立つボウルの前で、一度ぐっと言葉を呑み込みました。
結局、その晩のもやしは、義母から教わったレシピそのままで仕上がりました。
「うん、おふくろの味だ」
夫は満足げに笑い、私は曖昧にうなずきます。
新婚の台所に立ち上った湯気は、いつもより少しだけ、冷たく感じられた夜でした。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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