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「席、譲ったほうがいいよな」頭ではわかっていても動けなかった。結局、体調不良の女性に他の人が席を譲った時の葛藤

仕事帰りの電車で、目の前に立った青ざめた女性
仕事帰りの、夕方の電車。
その日は、いつもより少し空いていて、僕は座席に腰を下ろせていました。
つり革にぶら下がるよりは、座って一日の疲れを抜きたい。
そんなぼんやりした気分で、ぼうっと窓の外を眺めていたときです。
目の前に、ふらりと一人の女性が立ちました。
同年代くらい、明らかに体調が悪そうな顔色をしています。
額には汗が浮かび、つり革を握る指の関節が白く見えるほどでした。
(席、譲ったほうがいいよな)
頭ではすぐに分かっているのに、僕の体は、なぜか動きませんでした。
「立ち上がって声をかけて、もし違ったらどうしよう」
「ほかの人が譲るかも」
そんな小さな言い訳が、頭の中でぐるぐると回って、結局、僕は座ったままでした。
別の乗客が動いた瞬間と、こみ上げた本当の感情
そのときです。
少し離れた席に座っていた中年の男性が、すっと立ち上がりました。
つかつかと女性のそばまで歩いていき、軽くうなずいて声をかけます。
「どうぞ、こちらに」
女性は申し訳なさそうに頭を下げ、ふらつく足取りで席に腰を下ろしました。
「ありがとうございます」
その小さな声と、ほっとした表情。
女性が席に深く座り直した瞬間、僕の中で、ぐっと胸が詰まる感覚がありました。
譲れなかった自分の、小ささ。
頭ではちゃんと分かっていたのに、動けなかった、あの数秒。
女性が無事に座れたことには、心からほっとしました。
けれど、それ以上に強く残ったのは、自分自身に対する小さな失望のような感情です。
後日、同じ路線で電車に乗ったときのことです。
優先席にずらりと並んだ、同年代らしき乗客たち。
全員がスマートフォンに目を落としたまま、目の前に立つ高齢の男性に、一切目をくれない光景がありました。
その姿を見た瞬間、背筋にぞっとするものが走ったのです。
あの日の、動けなかった僕の延長線上に、この光景があるのかもしれない。
そう思った瞬間、僕は車両の真ん中で、ふらりと立ち上がっていました。
「次は、迷わない」
口には出さなかったけれど、胸の中で強く誓った夕方でした。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、20代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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GLAM Lifestyle Editorial
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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