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「困ったな、これじゃ帰れない」帰宅途中のゲリラ豪雨で立ち往生。見知らぬ女性の気遣いに、心がじんわり潤った夜

予報外れの土砂降り、身動きが取れない駅の改札
その日の夕方、私は駅の改札口で完全に途方に暮れていました。
ほんの少し前まで見えていた夕陽はどこへやら、空からは滝のような猛烈な雨が降り注いでいたのです。
容赦ない雨の音と、濡れたアスファルト独特の匂いが風に乗って漂ってきます。
天気予報は晴れだったため、傘など持っているはずもありません。
「困ったな、これじゃ帰れない……」
藁にもすがる思いでスマートフォンの雨雲レーダーを確認しましたが、無情にも赤いエリアが居座っており、雨が上がる兆しは皆無。
タクシー乗り場を覗けば気が遠くなるような大行列で、すっかり帰路を絶たれてしまいました。
周りにいる人たちも時計を睨みつけながらイライラした空気を漂わせていて、駅全体がピリピリしています。
仕事の疲労も相まって、いつ終わるか分からない雨宿りに私の心はすっかり折れかけていました。
突然手渡された傘と、背中を押してくれた優しさ
足元からじわじわと冷えが伝わってきたその時です。
不意に、横からトントンと肩を叩かれました。
「お姉さん、よかったらこれ、使ってちょうだい」
驚いて振り返った私の目の前にいたのは、小柄で穏やかな雰囲気のおばあさんでした。
そして半ば強引に、一本のきれいなビニール傘を私の手の中に押し付けてきたのです。
「えっ!? だめですよ、そんな。おばあさんが濡れてしまいます!」
予期せぬ展開に戸惑い、私は慌てて傘をお返ししようとしました。
けれど、おばあさんはにっこりと微笑み、力強く首を振りました。
「私の家はそこの角を曲がったところだから平気なの。若いあなたが濡れて風邪でもひいたら大変だから、遠慮しないで持っていきなさいな」
「でも、申し訳なさすぎます……」
「いいからいいから、気をつけて帰るのよ!」
おばあさんは私の言葉を遮るようにそう言うと、足早に駅の出口へ向かい、雨の降る街の景色の中へとあっという間に溶け込んでいきました。
私の手元に残されたのは、持ち手がきれいに手入れされた一本のビニール傘。
見ず知らずの人間にこれほど親切にできる人がいるなんて、思いもよりませんでした。
傘の柄からおばあさんの温もりが伝わってくるようで、ささくれ立っていた私の心は温かいもので満たされました。
あの日いただいた傘は、数年が経った今でも手放せない大切な存在です。
雨の日が来るたびにあの優しい笑顔を思い返し、私もいつか、困っている誰かにあんな風に自然と手を差し伸べられる人間になりたいと強く思うのです。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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GLAM Lifestyle Editorial
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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