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「アプリどれだっけ」レジ前でモタモタしている客。会計後に気づいた奇妙な感覚とは

雨と靴下と、伸びていく列
仕事帰りに冷たい雨が降り出したのは、駅を出た直後のことだった。
傘を広げながら小走りでコンビニへ飛び込み、温かい飲み物を1本だけ手に取ってレジへ向かった。
たったそれだけのことのはずだったのに、前に立った客の動きで空気が変わった。
財布を出しかけて、いったん止まる。スマートフォンを取り出して、画面をスクロールする。
「少々お待ちください」
店員が穏やかに声をかけた。
前の客はつぶやきながらアプリを次々に開いていく。
「アプリどれだっけ」
1つ目を閉じて2つ目を開き、また閉じて3つ目へ。
後ろに並ぶ人の列が静かに伸びていった。
傘から滴が落ちて、足元に小さな水たまりができていた。
靴下がじわりと冷たくなっていくのを感じながら、「早く終わってくれ」と心の中で繰り返した。
後ろを振り返るわけにもいかず、ただ自分の番が来るのを待っていた。
店員はずっと笑顔だった。声が少し小さいのか、レジの機械音に混じってよく聞こえない。
こちらの番になったとき、店員が何か言ったのだが聞き取れず、思わず「え?」と返してしまった。
「ポイントカードはお持ちですか?」と店員は少し大きな声で繰り返してくれた。
持っていない。そう答えてやっと会計が進む。たった1本の飲み物を買うのに、ずいぶん時間がかかった気がした。
焦りだけが胸に残った
ようやく会計が済んで、店の外へ出た。
雨が止んでいた。
空を見上げると、さっきまで霧のように漂っていた雨粒が消えている。
道路の濡れた路面だけが、雨が確かにあったことを伝えていた。
傘をたたみ、冷えた飲み物の袋を持ち直す。急ぎ足で来て、列に並んで、靴下を濡らして。
それなのに外に出た瞬間には、もうどこにも急ぐ理由がなかった。
何に急かされていたのだろう、という気持ちが静かに湧いてくる。
前の客が悪いわけでも、店員が悪いわけでもない。ただ自分だけが焦っていて、焦ったまま全部が終わってしまったような、奇妙な取り残された感覚だった。
やけに眩しい街灯の下を歩きながら、冷たい靴下の感触がどうにも気になった。
急ぐつもりだったのに、急いだ意味が消えてしまった夜だった。
コンビニの自動ドアが閉まる音を背に、濡れた靴下のまま家路についた。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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