Share
「カードが使えなくて…現金もなくて」初デートのレストランで慌てる男性→全額支払って店に置き去りにした瞬間

テーブル越しに見えた素
マッチングアプリで知り合った男性との初デートは、街中のイタリアンでのランチだった。プロフィールでは穏やかで誠実そうな印象。実際に向かい合うと、確かに話し方は柔らかかった。
けれど、料理が運ばれてきた瞬間から、私は小さな違和感を拾い続けることになる。
使い終えたフォークをテーブルクロスに直接置く。ナイフの背で皿の上を強く叩く。スープを飲み干したあと、皿の縁を指でぬぐう。
パスタを巻く動作は乱雑で、ソースが胸元に飛んでも気にする様子がない。一つひとつは決定的ではないけれど、合わさると無視できない違和感になっていく。
(育ちというより、人前でのふるまいに気を配ったことがないのかもしれない)
そう思いながら、私は会話に集中するふりを続けた。彼はやたらと自分の仕事の話をしたがり、こちらの相づちが間に合わなくても気にせず話し続ける。話の中身は悪くないのに、聞いている側の負担を考える視点だけがすっぽり抜けていた。
会計でめくれた本性
食事が終わり、お会計の段になった。「ここは僕が」と言って財布から取り出したカードを、彼はレジの前で何度もスライドさせた。店員さんも端末を変えて試してくれたけれど、結果は同じ。
「カードが使えなくて…現金もなくて」
声が小さく上ずっていた。財布の中をのぞき込み、ポケットを探り、リュックの中までひっくり返している。だが千円札一枚出てこない。後ろには会計待ちの列ができはじめ、店員さんも明らかに困り始めていた。
「あの…ちょっと、立て替えてもらってもいい?あとで必ず返すから」
困り顔でこちらを見上げる彼の目に、申し訳なさよりも甘えのほうが強くにじんでいるのが見えた。初対面で、しかも自分から「ここは僕が」と言った人間が見せていい表情ではないと思った。
扉を開けた瞬間
私は黙って財布を出し、二人分の伝票をそのまま支払った。レシートを受け取りながら、彼に向かってひと言だけ告げる。
「マナー以前に、大人として準備が足りなさすぎます」
「一緒に出ていくのは、私のほうが疲れるので」
呆然とした顔の彼を席に残し、私はそのままドアを開けて表通りへ出た。春の風が頬をすっと通り抜ける。背中越しに小さく声が聞こえた気もしたが、振り返らなかった。歩道を一歩踏み出すごとに、二時間分の違和感がほどけていくのがわかる。歩き出した瞬間の解放感は、今でも忘れられない。最高にスカッとした、午後一時の出来事だった。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
ほかの小説も読む
登場人物から探す
テーマ・シチュエーションから探す
結末から探す
最も人気の短編小説
もっと見る >スカッとする短編小説
もっと見る >モヤモヤ短編小説
もっと見る >ゾッとする短編小説
もっと見る >LINEの短編小説
もっと見る >実体験をもとにした短編小説
もっと見る >恋愛トラブル
もっと見る >ハラスメント
もっと見る >金銭トラブル
もっと見る >浮気・不倫
もっと見る >迷惑
もっと見る >仕事のトラブル
もっと見る >非常識
もっと見る >LINE誤爆
もっと見る >思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」
その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

GLAM Lifestyle Editorial
編集部
日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
Feature
特集記事

