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「早く退院したい」と言っていた母→叔父の心無い一言に絶句

関東から東北の両親を看る、繰り返しの帰省
関東で会社員をしている私には、東北で暮らす両親がいます。
父は数年前に大きな病気をしてから体力が落ち、すっかり身の回りのことが難しくなって、地元の介護施設に入居しました。
残された母は、実家でひとり暮らし。
その母も、ステージ4の癌で通院と入院を繰り返す日々が続いていました。
会社を抜け、新幹線に飛び乗り、点滴の管が並ぶ病室で枕元のリンゴを剥く帰省を、もう何度繰り返したかわかりません。
ベッドに横になった母は、看護師さんが点滴を替えにくるたびに、いつも私の顔を見て言うのでした。
「早く退院したい」
母には実弟がいて、実家の斜め向かいに長年住んでいます。
母は私が病院を離れている間、その弟に何度も電話をかけていたようでした。
「早く退院させてくれって、お医者さんに頼んでよ」と。
年末にようやく退院が決まった、その電話
そして、年の瀬に近い頃。
主治医から、年末年始は自宅でゆっくり過ごせるよう退院の手筈を整えてくれる、という連絡が入りました。
母にとっては、待ちに待った帰宅。
私もそれを聞いて、せめて正月だけは実家のこたつで一緒に過ごせると、ほっと胸を撫で下ろしました。
その夜、関東の自宅にいた私のスマホに、母の弟、つまり叔父から電話が入りました。
受話器の向こうから、いきなり怒鳴り声が飛んできたのです。
「正月になんか退院させるな!」
耳元でその声を聞いた瞬間、私は言葉を失いました。
姉が、自分の家に帰りたいと言っている。
主治医も、そろそろ家でと判断している。
それに対して、なぜ実の弟がそんな言い方をするのか。
叔父の口調から、薄々察しはつきました。
母が退院して斜め向かいに戻ってくれば、近所に住む自分が、何かと面倒を見なくてはいけなくなる。
それを避けたかったのだろうと。
遠方にいる息子の私は、新幹線に飛び乗って駆けつけることしかできません。
日常の小さな世話──買い物、声かけ、ちょっとした送り迎えは、どうしても近所に住む叔父の役回りになる。
そう考えれば、叔父の本音はわからなくもありません。
けれど、相手は実の姉です。
ステージ4で、「早く家に帰りたい」と何度も電話をかけてきた、たった一人の姉なのです。
受話器を握ったまま、私はうまく返事ができませんでした。
正月のこたつで、母にミカンを剥いてあげるのを楽しみにしていた自分の気持ちが、すうっと冷えていくのがわかりました。
母には、叔父からのその一言を伝えていません。
結局、母は予定通り退院し、慣れた家で年を越すことができました。
けれど、あの夜の怒鳴り声は、いまも私の胸の奥にぽつんと残っています。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、50代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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