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「お願いしていい?」祖父の葬儀で葬儀屋から決めごとを任された私→労いの言葉がなかったことに対する私の本音

「お願いしていい?」祖父の葬儀で葬儀屋から決めごとを任された私→労いの言葉がなかったことに対する私の本音
居間で名指しされた孫娘
祖父が亡くなった日、実家の居間には親戚が集まっていた。
喪主は父親で、隣には母と兄と弟が並んでいる。
そこへ、葬儀屋の担当者が打ち合わせのバインダーを抱えて入ってきた。位牌の置き方、花の種類、香典返し。決めなければならない項目が、紙の上に並んでいる。
担当者はぐるりと部屋を見回して、それから私の前で視線を止めた。喪主の父親に向き直ることもなく、母にも兄弟にも視線を投げず、孫娘の私だけを見て言った。
「お願いしていい?」
一瞬、空気が止まった気がした。その場でいちばん年長の喪主は、すぐ斜め前に座っている。
なのに葬儀屋は、孫の私を選んだ。
父も、母も、兄も弟も、何も言わなかった。否定もしなければ、引き受けもしない。そのまま、私が頷くのを当然のように待っていた。
お茶を運び終えた夜のため息
結局、その日からすべてが私の役割になった。お花の種類、棺に入れるもの、香典返しの単価、参列者へ出すお茶菓子。一つひとつ、座っている親族のあいだを回って確認していく。
「これでいいかな?」
「叔父さんはこっちのほうがいい?」
誰かに頼られているというより、誰も判断したくないから私に聞かせている、そんな空気だった。
足りなくなったお茶やお菓子の買い出しも、気づけば私が一人で車を走らせていた。スーパーの紙袋を抱えて居間に戻っても、誰も顔を上げない。テレビの音と、湯呑みが触れ合う音だけが、生ぬるく部屋に流れていた。
誰かに頭を下げてほしかったわけではない。ただ、ねぎらいの言葉でいいから欲しかっただけだ。
打ち合わせがすべて終わった夜、座布団を片付けながらふと思った。
父からも、母からも、兄からも弟からも「お疲れ様」のひと言が、最後までなかった。
葬儀屋に名指しされたあの瞬間、家族の誰もかばってくれなかったこと。
一日中走り回っても、誰一人として感謝の言葉を口にしなかったこと。怒りというより、長く居座る違和感のほうが強かった。
祖父を見送る大切な日に、自分の家族からこういう扱いを受けるとは思っていなかった。流し台で湯呑みを洗いながら、私は静かに息を吐いた。手のひらに残る冷たい水が、なぜかその夜だけはやけに沁みた。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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GLAM Lifestyle Editorial
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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