Share
「遺産なんていらない」と辞退した兄が金庫の中身を黙って持って行った驚きのワケ…【短編小説】
INDEX

優しい兄の言葉の裏
父が亡くなって一週間。葬儀も慌ただしく終わり、兄の雅也と二人、実家のリビングで向かい合っていました。
「なあ、由紀。親父の遺産のことだけどさ」
兄が切り出しました。
「俺は遺産なんていらないよ。ずっと親父の面倒見てくれたのは由紀だし、お前が全部もらえばいい」
私はその言葉に、少しだけホッとしてしまいました。ここ数年、父の介護はほとんど私一人で担ってきましたから。兄は「仕事が忙しい」と理由をつけては、実家にも寄り付きませんでした。
「ありがとう、お兄ちゃん。そう言ってくれると助かるわ」
そう礼を言ったのですが……。
父が残した最後の手紙
数日後、私は異変に気づきました。父が大切にしていた金庫の中身が、空っぽになっていたのです。そこには通帳や実印など、大事なものが全て入っているはずでした。
まさか、泥棒? 青ざめる私。すぐに雅也に電話しました。
「お兄ちゃん、大変! 実家の金庫が…」
「ああ、あれな。俺が持っていったよ」
「え?」
「いや、ちょっと手続きで必要でさ。こっちでやっとくから、由紀は何もしなくていいぞ」
あまりにも軽い口調。父の介護はすべて私に押し付けたのに、お金の手続きだけは素早い兄に、強烈な違和感を覚えました。
何かおかしい。そう思った私は、父の書斎をもう一度、隅々まで調べることにしました。すると、父が愛用していた万年筆のケースから、一通の手紙が出てきたのです。
宛名は「雅也と由紀へ」と書かれています。
震える手で封を開けると、そこには父の几帳面な字が並んでいました。
『二人へ。雅也には、事業資金として数年前に500万円を貸している。これは由紀には内緒にしていた。雅也、お前はこの500万円を遺産の前渡しとみなし、残りの遺産はすべて由紀に譲ること。もしお前がこの約束を破り、由紀を騙そうとするなら、お前との縁はなかったものとする』
私は絶句しました。兄は父から多額のお金を受け取っていたのです。だから「遺産はいらない」なんて言ったんだ…。通帳を持ち去ったのは、その借金の証拠を隠し、残りの遺産も手に入れようとしたからに違いありません。
私はすぐに雅也を呼び出しました。
「お兄ちゃんが言ってた『手続き』って、これのこと?」
手紙を突き出すと、雅也の顔がみるみるうちに青ざめていきました。
「な、なんでそれを…!」
「全部、お父さんが見てたみたいね」
観念した雅也は、すべてを白状しました。結局、遺産は父の手紙の通りに分配され、兄の取り分はほとんど残りませんでした。
お金に目がくらんだ兄の企みは、亡き父の手紙によってすべてひっくり返されたのです。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
******************
心に響くストーリーをもっと読みたい方
【他のおすすめ短編小説を見る】
******************
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。
友だち登録&アンケート回答で「Amazonギフトカード」など好きな商品を選べるギフトを毎月抽選で5名様にプレゼント!
\ 今すぐ応募する /
Feature
おすすめ記事

