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息子をからかい続けた「ガキ大将」の存在→家庭の事情で遠くへ引っ越した夏、胸にすっと広がった静けさ

誰にも言えないまま積んできた日々
息子が小学5年になったとき、転校先のクラスに一人、やたらと目立つ男の子がいた。
「ガキ大将」
近所の保護者の間では、その子はそう呼ばれていた。
友達が多く、クラスの輪の中心にいるような存在。
口が達者で、運動もできる。表向きは陽気に見えるが、気に入らない相手には容赦なかった。
息子はその子に目をつけられた。
最初は些細なからかいだった。
持ち物をいじられたり、何かするたびに笑われたり。
やがて輪が広がり、周りの子も同調するようになっていった。
「今日も何か言われた?」と聞くと、息子は黙って首を振ることが多かった。
言葉にするのが嫌なのか、心配させたくないのか。
そのたびに胸が締め付けられた。
先生に相談しようか迷ったが、相手の子の影響力を考えると、下手に動いて息子の立場が悪化するのが怖かった。
夫とも話し合ったが、具体的な策は見つからないまま、ただ見守るしかない時間が続いた。
運動会の練習期間、息子が体調不良を訴える日が増えた。
熱もなく、食欲もある。
それでも朝になると「頭が痛い」「お腹が痛い」と言い出す。
学校に行けない日は一緒に家にいたが、何を言えばいいか分からなかった。
「気にしなくていい」は違う。
「頑張れ」も違う。ただそばにいることしかできなかった。
子どもの世界に親が踏み込むのは難しい。そうわかっていても、何もできない自分が情けなかった。
夏に届いた、思いがけない知らせ
状況が動いたのは、昨年の夏のことだった。
「あの子、転校するらしい」と息子がぽつりと教えてくれた。
家庭の事情で、遠方へ引っ越すことになったという。
詳しいことは分からない。その子自身や家族がどういった事情を抱えていたのかも、知る立場にはない。
不可抗力で起きた出来事だ。
それでも、知らせを聞いたとき、体の力がすうっと抜けるような感覚があった。
意識して押さえつけていた何かが、静かにほどけていく。
夏休みが明けた最初の週、息子は朝から机に向かって宿題を片付けていた。
登校前に「行ってくる」と玄関で振り返ったその顔が、どこか軽くなっていた。
学校が終わって帰ってきた息子に「どうだった?」と聞くと、「普通」と答えた。
その「普通」が、どれほど大きな言葉か。前の学期には聞けなかった言葉だった。
夏の終わりに、やっと空気が変わった気がした。
解決したわけではないし、息子が乗り越えたわけでもない。
でも、重かった日常の空気が少し変わった、それだけで十分だと思った。
今も思い出すと胸がざわめく。もっと早く動けばよかったのか、と考えることもある。
それでも、あのときできることはやったと信じて前を向いている。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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GLAM Lifestyle Editorial
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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