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「今、普通に割り込んだよね…?」バス停で当たり前のように順番を抜かす女性。だが、他の乗客の正論をうけ態度が一変

「今、普通に割り込んだよね…?」バス停で当たり前のように順番を抜かす女性。だが、他の乗客の正論をうけ態度が一変
朝の行列
朝の空気はまだ少し冷たく、駅へと向かう人々の足音だけが規則正しく響いている。
通勤ラッシュという戦場に身を投じる前、私にとって唯一の贅沢は、バスの車中でお気に入りの一冊を開く時間だった。
「よし、今日は確実にいける」
私はいつもより20分早くバス停に立った。
並んでいるのは私の前に二人だけ。3番目という絶好のポジションだ。
これなら、希望通りの窓際の席に座れるだろう。
スマートフォンの画面をなぞりながら、静かにその時を待つ。
私の後ろには、一人、また一人と列が伸びていく。
誰もが口を閉じ、朝の静寂を守りながら整然と並ぶ。
そんな当たり前の景色が、その一瞬で無残に切り裂かれた。
バスの大きな車体が遠くの角を曲がってきた、その時だ。
一人の年配の人物が、私の横を風のようにすり抜けた。
迷いのない足取り、当然だと言わんばかりの横顔。その人は、あろうことか列の先頭へと滑り込んだのだ。
(えっ……嘘でしょ?今、普通に割り込んだよね…?)
誰かが言ってくれるのを待つ時間はなかった。私は心臓の鼓動を抑え、震える声を絞り出しました。
「あの……すみません。皆さん、後ろに並んでいらっしゃるのですが」
振り返ったその人の瞳には、反省の色など微塵もなかった。
「ふん、最近の若い人は本当に冷たいね。年長者を敬うっていう気持ちはないのかい?たかが一人くらい、いいじゃないの」
「いえ、敬う気持ちの問題ではなくて……。ここにいる皆さんも、早くから並んで待っているんです」
食い下がる私に、その人はさらに声を荒らげた。
「細かいこと言わないでよ!これだから今の若者は余裕がないっていうのよ。少しは譲る心を持ちなさいよ」
理不尽な言葉が、刃のように突き刺さる。
こちらが非常識であるかのように仕立て上げられる悔しさに、視界がじんわりと滲みそうになった。
状況を変えたのは
その時だった。
「あら、それは少しお門違いですわよ」
凛とした、鈴を転がすような声が響いた。
私のすぐ後ろに並んでいた、白髪を上品に整えた女性だった。割り込んだ人物は、自分と同年代、あるいは少し年上に見えるその女性の登場に、明らかにたじろいだ。
「な、何がですか」
「ルールを守って並んでいるお嬢さんに、そんな失礼な物言いをするなんて。同じ年配者として、見ていて恥ずかしくなりました。そんなに座りたいのでしたら、私が席を譲って差し上げてもよろしくてよ?ただし、まずは列の最後に並び直すのが筋というものでしょう」
その毅然とした言葉に、周囲からも「そうだ、みんな並んでるんだ」「いい年して恥ずかしい」と、小さな同意のさざ波が広がり始める。
「……もういいわよ! 別のバスに乗るから!」
顔を真っ赤に染めた割り込み者は、吐き捨てるように言い捨てると、逃げるように人混みの向こうへと消えていった。
入れ替わるように、大きな音を立ててバスが停留所に滑り込んでくる。
先ほどの女性が、私の方を向いて優しく目を細めた。
「災難でしたわね。さあ、行きましょうか」
「ありがとうございます……! 本当に、助かりました」
開いた扉から乗り込み、私は無事、一番後ろの窓際の席に深く腰を下ろした。
20分間、寒さに耐えて待った時間。
そして、理不尽に屈せずルールを守ろうとした自分。
それらがすべて報われたような気がして、窓の外を流れる見慣れた景色が、いつもよりずっと鮮やかに輝いて見えた。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

GLAM Lifestyle Editorial
編集部
日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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