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「保証人になって」と泣きつく兄。契約書の隅に書かれた、小さな一文を見つけて私が震えた理由【短編小説】

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
「今回だけ」と泣きつく兄
「頼む、お前しかいないんだよ!保証人になって」
突然やってきて、カバンも置かずにリビングで頭を下げる兄。
兄は、昔から金遣いが荒く、親に迷惑ばかりかけてきました。しかし、両親が他界した今、頼れるのは妹である私しかいないという理屈も、分からなくはありませんでした。
「今回だけだから。絶対に迷惑かけない」
涙ながらに訴える兄の姿を見て、私の心は揺れました。今回の頼みは、兄が新しく始める事業のための運転資金の連帯保証人になってほしいというもの。
「絶対に成功する」「半年で完済する」という言葉を信じたい気持ちと、長年の不信感が私のなかでせめぎ合います。
「分かった……。でも、内容だけはしっかり確認させて」
「ああ、もちろん! 本当にありがとう!」
兄は満面の笑みを浮かべ、カバンから一枚の契約書を取り出しました。私は細かい文字がびっしりと並ぶ紙面に目を落としました。借入金額や返済計画、そこには兄の説明通りの数字が並んでいました。
やっぱり、疑いすぎだったのかもしれない。そう思ってペンを手に取ろうとした、その時です。
署名直前で見つけた一行
契約書の右下、署名欄のさらに下の余白部分に、小さな文字で、ある一文が印刷されているのに気がつきました。
『尚、本契約の不履行が生じた際、保証人は所有する不動産(○○市○○区〜)の権利を即時譲渡することに同意するものとする』
そこに書かれていたのは、私が汗水流して働き、夫と二人でやっと手に入れた「マイホームの住所」そのものでした。
私は恐怖と怒りで指先が震え出し、ペンを取り落としました。兄は、ただの金銭的な保証人だけでなく、最初から私の家をカタに借金を踏み倒すつもりだったのです。
私がこの家をどれほど大切にしているかを知っていながら。
「……お兄ちゃん、これ知ってたの?」
震える指でその一文を指差すと、兄の顔から血の気が引いていくのが分かりました。目が泳ぎ、口ごもる兄。その表情が全てを物語っていました。
「帰って。二度と私の前に現れないで」
私は冷たく言い放ち、契約書をビリビリに破り捨てました。兄は何か叫んでいましたが、私は迷わず追い返しました。
あの一文を見落としていたらと思うと、今でも背筋が凍る思いです。肉親だからこそ、情に流されてはいけない。そう痛感した出来事でした。
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※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。
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