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ネトゲの相棒は、いつも無視してた『地味な同僚』だった。正体がバレた彼が放ったまさかの一言【短編小説】

「ユキ、今日のボス戦、完璧だったな」
チャット画面に表示された相棒からのメッセージに、私は思わず笑みをこぼしました。現実世界での私は、会社では目立たない存在。特にこれといった特技もなく、定時で帰る地味なOLです。しかし、オンラインゲームの世界では「ユキ」として、多くの仲間と協力して強大な敵を倒していました。
そこで出会った相棒の「タカ」は、私にとってかけがえのない存在でした。ゲームの腕前もさることながら、私の仕事の愚痴や、誰にも言えない本音をすべて受け止めてくれる、優しくて頼もしい人。彼は私の“すべて”を知っている、もう一人の私自身のような存在でした。
「現実」と「仮想」の二重生活
会社での私の楽しみは、昼休みや休憩時間にタカとチャットをすること。同僚との会話は天気の話ばかりでしたが、タカとの会話はいつも刺激的で、私の心を躍らせてくれました。
そんな私の視界の隅にいつもいたのが、地味で口数の少ない同僚・高橋さんです。彼はいつも一人で静かに仕事をこなし、私とは挨拶程度しか会話がありませんでした。もちろん、タカに高橋さんの話をしたこともありません。
ある日のランチタイム。同僚たちが「高橋さんって、実はすごいゲーマーらしいよ」と話しているのが聞こえてきました。彼の意外な一面に驚きましたが、私はすぐにタカとのチャットに戻り、その話は頭の片隅に追いやられました。
彼の正体、そして明かされた真実
その日の夜、いつものようにタカとチャットしていると、彼がこう言いました。「今日、会社で美咲さんがプレゼンで頑張っていたの、見ましたよ」と。
私は思わず息をのみました。なぜ、タカが私の会社での出来事を知っているの? まさか…。震える指で、「タカさんって、もしかして高橋さんですか?」と尋ねました。
チャット画面は数分間沈黙した後、返ってきたのは、「はい、そうです」という言葉。
信じられない気持ちで画面を見つめていると、さらにメッセージが届きました。「美咲さんが、現実で自己評価を下げているのを知っていました。でも僕は、あなたの仕事への真摯な姿勢も、ゲームで見せる仲間思いな一面も、全部尊敬しています」
私は、自分を見てくれている人がこんなに近くにいたことに驚き、そして感動しました。彼の正体は、ゲーム内での頼もしい相棒そのままだったのです。
そして、最後に彼はこう告げました。「今度、会社の外で会いませんか? 美咲さんに、もう一度ちゃんと会ってみたいです」と。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
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