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「女友達はいない」と言った彼。→スマホのアルバムに残された知らない女の笑顔に、凍りついた【短編小説】

「俺には女の友達なんていないよ。美咲だけが特別だから」
タケルはそう言って、私の髪をくしゃっと撫でた。
誠実で思いやりがあって、私を一番に考えてくれる。
誰に紹介しても胸を張れる理想の恋人。私は彼の言葉を疑うことなく信じていたし、将来を一緒に歩むのだと思っていた。
だが、その信頼はある晩に音を立てて崩れた。タケルがシャワーに入っているとき、リビングのテーブルに置かれたままのスマホが不意に光った。
普段は通知を切っているはずなのに、画面には「ギャラリーアプリ」の表示が浮かんでいた。
一瞬見えたサムネイルに、見覚えのない女性の笑顔とタケルの姿が並んで映っていたのだ。
【衝撃】完璧な彼の“別の顔”
好奇心と不安に背中を押され、私はスマホを手に取ってしまった。開かれたアルバムには、私の知らないタケルがいた。
何人もの女性と肩を並べ、笑顔を見せる姿。そこにあるのは、彼が言っていた「女友達なんていない」という言葉とは正反対の現実だった。
さらにアルバムを遡ると、私と出会う前の写真も数多く残されていた。そこにはタケルが、まるで恋人のように一人の女性と寄り添い笑う姿が写っていた。
彼の本性と、私の決断
シャワーから戻ったタケルは、私の表情に気づき「大丈夫?」と柔らかい声をかけてきた。けれど、その声すら空々しく響いた。
私は画面を突きつけた。「この写真、どういうこと?」
彼の顔から血の気が引いていき、沈黙のまま俯いた。その姿を見た瞬間、私は理解した。誠実さも、優しさも、愛の言葉も──すべてが私を安心させるための仮面にすぎなかったのだと。
「女友達はいない」という彼の断言は、ただの都合のいい嘘だった。私は彼に何も求める気がなくなり、言い訳も謝罪も受け入れる気にはなれなかった。
静かに席を立ち、彼の元を離れることを選んだ。それが、私にできる唯一の答えだった。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
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