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「優雅な海外生活」の裏側。→人気インスタグラマーの本当の寝床は、ホテルのロビーだった【短編小説】

優雅な海外生活の裏側→人気インスタグラマーの本当の寝床はホテルのロビーだった短編小説

 

「今日も最高の1日でした!」

私は満面の笑みで、シャンパンを片手に夜景をバックにした写真をインスタグラムに投稿した。

フォロワーは10万人を超え、私の“優雅な海外生活”は多くの女性の憧れの的だった。

投稿にはすぐに「素敵!」「私もこんな生活がしたい!」というコメントが殺到する。しかし、その写真の裏側で、私の心は常に張り詰めていた。

最高の写真が撮れるカフェでは一番安いコーヒーを一杯だけ。

ブランドの新作はレンタルサービスで借りたもの。

そして、夜景の見える高級ホテルは、泊まっているのではなく、ロビーで写真を撮らせてもらっているだけだった。

 

「見せかけの幸せ」と「本当の現実」

華やかなフィードを維持するため、私の生活は常に偽りで塗り固められていた。

投稿のために、私は常に最高の笑顔を貼り付け、おしゃれなスポットを探し回った。フォロワーが増えれば増えるほど、この完璧な自分を演じ続けなければならないというプレッシャーが、私を追い詰めていった。

気づけば、見せかけの生活を維持するための旅費や衣装代、カフェ代で、借金は膨らんでいた。

本当に心から「幸せ」だと感じる瞬間は、どこにもなかった。旅の疲れと精神的な疲労で、私は次第に笑顔を演じることすらできなくなっていった。

 

一夜限りの「本当の寝床」と、見つけた答え

その夜、次の滞在先のホテルの予約が手違いで取れていないことが判明した。手元には、タクシー代にも満たないわずかな現金しかない。

真冬の夜空の下、私はたどり着いた高級ホテルのロビーで、チェックインを待つふりをして座り込んだ。ここが、今夜の私の“寝床”だった。

凍える体でソファに座っていると、海外旅行に来たであろう家族連れが、楽しそうに笑いながらロビーにやってきた。

両親と子供たち、そして祖父母。彼らの屈託のない笑顔は、私がこれまでSNSで投稿してきたどんな写真よりも、輝いて見えた。

その瞬間、私の心の中で何かが弾けた。私は、いったい何のためにこんなに苦しい思いをしてきたのだろう。

誰かの憧れになることと引き換えに、本当の自分を見失い、心を空っぽにしてしまった。

翌朝、私はスマホを手に取り、一枚の写真を投稿した。それは、ホテルのロビーのソファで眠る、疲れ果てた自分の足元を映した写真。

「本当の幸せは、誰かのいいねの中にはない」と添えて。

それは、私の人生をリセットするための、最初で最後の一枚だった。

 

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

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