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「出産なんて楽勝でしょ?」と笑う夫。陣痛室に入った瞬間、顔が真っ白になった理由とは【短編小説】

「出産は病気じゃない」と笑う夫の能天気さ
「出産なんて楽勝でしょ?」「病気じゃないんだし、気合で乗り切れるよ!」
妊娠中の私に向かって、夫はいつもそう言って豪快に笑っていました。彼にとって、出産はどこかスポーツの試合のような感覚だったのかもしれません。
「俺がしっかりサポートするから大丈夫!」と力強く胸を叩く夫に、私は(サポートって何を…?)と、大きなため息をつくしかありませんでした。
もちろん、夫なりに気遣ってくれてはいたのです。重いものは持ってくれましたし、食べたいと言ったものは(夜中でも)買いに走ってくれました。
ただ、根本的なところで「出産の痛み」や「大変さ」を、少し軽く見ている節があったのです。
そして、ついに予定日を数日過ぎたある日の夜中。下腹部にズキリとした、今までにない痛みが走りました。間隔を測ると、もう病院へ行くべき時間です。
「来たかも…」
「よし、来たな!リラックス、リラックス!」
夫はなぜか私以上にテンションが高く、まるでイベントにでも行くかのように張り切って準備をしています。病院へ向かう車内でも、「BGM、何がいい?」「いやー、ついに会えるな!」と、痛みで時折息を止める私の横で、本当に嬉しそうでした。
病院に到着し、手続きを済ませ、私は陣痛室へと案内されました。しばらくして「旦那さんもこちらへどうぞ」と助産師さんに促され、夫は「はーい!」と元気よく返事をして、陣痛室に入ってきました。
その瞬間でした。
夫が目にした「現実」とは
「え……」
さっきまでの笑顔が嘘のように、夫の顔が真っ白に変わったのです。彼の視線は部屋の一点に釘付けになっていました。
そこにあったのは、テレビドラマでしか見たことのないような、物々しい機械の数々。そして、銀色のトレイの上には、整然と並べられたたくさんの見慣れない器具…。
モニターからは、私のお腹の張りと赤ちゃんの心音が、緊迫感のある音で室内に響き渡っていました。
夫は、ただ私が苦しんでいる姿を見て驚いたのではありませんでした。彼が「楽勝」だと思っていた出産の現場が、実際はどれほど「命懸け」の医療の場であるか。その「現実」を、そこに並んだ器具たちが雄弁に物語っていたのです。
「ごめん……俺、何も…分かってなかった…」
彼は震える声でそう言うと、私の手を強く、強く握りしめました。そこからの夫は、一睡もせず、ただひたすらに私の腰をさすり、声をかけ続けてくれました。
もう彼の口から「楽勝」なんて言葉が出ることは、二度とありませんでした。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
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※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。
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