GLAM Editorial

【GLAMなオトコ】Vol.16 ウェス・アンダーソン最新作『犬ヶ島』のキーマン! 野村訓市、「とんでもない作品に手を出しちゃったな」

(c)2018 Twentieth Century Fox Film Corporation

Q.日本が舞台ということで、とくに意識したことはありますか?

たくさんの素晴らしい日本人が制作スタッフとして関わっていましたが、最終的には、自分のところに確認がくるので、「これどう思う?」と訊かれたときに、ブレないように心がけました。

ストップモーション・アニメは1日中撮影しても50秒分しか撮れないという世界で、撮影だけで2年かかっています。ラフが出来上がった時点で内容を見て確認するというタイプの作品ではないので、自分が何かを訊かれたときに、答え方、基準値がブレてはいけないことに気づいてしまったんです。

そこからは、ブレないように、ブレないようにと……、辛かったです(笑)。いつも自分が、長い原稿を書いているときによくやる、最後に一気に編集でどん!というのができないパターンは辛いなと。ウェスの作品というのが頭にあるので、前回自分がどんなことを言ったのか、きちんとメモしていました。

Q.ビジュアルにインパクトがあり、引き込まれるシーンの連続でした。とくに印象的だったのが、小林市長がお風呂に入っているシーンです。たくさんの犬が描かれた日本画のタイル、赤い電話、ヒノキのお風呂に、薪をくべるストーブなど。あのようなビジュアル面でも野村さんのアドバイスがかなり取り入れられているのでしょうか?

あのシーンは、絵コンテの段階で声を録りました。ちょうど最初の人形を作り出した頃で、ウェスが「小林市長の人形が出来上がったの、知ってる? パンパカパーン!」みたいな感じでうれしそうに見せてくれました。「全然、僕と似てない」というのが率直な感想でした。小林市長のモデルになったのは、三船敏郎さんなんですけどね。

銭湯の写真とか、参考になりそうなビジュアルをウェスにバンバン送りました。そこから、ウェスが頭の中でいろいろイメージしていったという感じです。何か質問がきたら、アドバイスするという流れでした。

ウェスは日本に1回しか来たことがなくて。その来日の際には、毎日一緒にいて、ゴールデン街を連れ回して朝まで飲んでいました。そのときのことが印象に残っているようで、『犬ヶ島』の最初の絵コンテに、いい意味でのごちゃまぜ感が出ていて、すごくうれしかったです。ウェスにいろいろと参考になる写真を出しているときに、「間違ってない方向にいくぞ!」という確信がありました。ウェスがどう料理して魅せてくれるのかを楽しみにしていたのですが、僕的にはものすごく満足度の高いビジュアルに仕上がりました。市長のマンションとかも、昔の帝国ホテルをイメージしています。

Q.懐かしさの中に、心地よい古めかしさを感じ、同時に新しさも感じました。

ドラえもんの世界と同じですよね。超昭和なイメージで四畳半みたいなところに未来が入っている。過去に考える未来ってどこか楽天的な感じがありますよね。暗い世相の中、そういうものがあるのはいいかなって思います。

Q.ハリウッドからも豪華な俳優陣が参加していますが、日本のキャストもとても豪華ですよね。キャスティングはすべて野村さんが担当されたのでしょうか?

日本に住んでいる人については僕が担当しました。キャラを設定して、その年齢に合うキャストを探そう! という感じで。虹郎が中学生の編集長役をやっていますが、ちょうど彼も10代だったので。年齢、キャラクターの感じと近い人を意識して選びました。あと、僕が知っている人で、ある程度無茶振りもできることも基準になりました(笑)。

脚本も渡せないし、役柄とセリフだけを渡して、口頭で世界観を軽〜く説明して。雲をつかむような形で参加してもらいましたね。でも、海外の参加組もこんな感じで進めていたので。メインキャストでない限りは、映画が出来上がってから、自分がどんな役、どんなシーンで登場するのかが分かるというイメージです。

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