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『在宅はサボれる』と笑った上司。→深夜2時の勤務ログを突きつけ、会議室を凍らせた話【短編小説】

在宅はサボれると笑った上司→深夜2時の勤務ログを突きつけ会議室を凍らせた話短編小説

「在宅はサボれるからいいよな」と笑った上司

在宅勤務が始まって半年ほど経った頃のことです。私は必死で成果を出そうと、深夜まで資料を作り、朝にはメールを送信し、誰よりも仕事に向き合ってきました。

そんなある日、週次ミーティングで上司の佐伯さんが笑いながら言ったのです。

「在宅はサボれるからいいよな、山本」

会議室には笑いが広がりました。ですが、その瞬間、私の心には冷たいものが落ちました。サボっている? 私の努力は、画面越しでは伝わっていなかったのでしょうか。

 

私が黙っていられなかった理由

その日から、私は密かに準備を始めました。Teamsのログ、メール送信履歴、作業ファイルの更新時間──私がどの時間に何をしていたのか、すべてを証明できる記録を残すようにしたのです。

深夜1時、クライアントから届いた修正依頼に即対応し、2時には修正版を送信。朝6時には次の会議資料を仕上げる。そんな日々が続きました。

本当は、そんな証拠なんて残さなくてもよかったのかもしれません。でも、あの一言がどうしても許せなかったのです。

会議室が凍りついた瞬間

翌週の全体会議で、私はいつも通り報告を終えたあと、こう切り出しました。

「先週、『在宅はサボれる』と言われましたが、これが私の勤務ログです」

プロジェクターに映し出されたのは、日付と時刻が刻まれた作業履歴の一覧。深夜1時台、2時台の更新記録がずらりと並びました。

会議室は静まり返り、誰も笑いませんでした。佐伯さんの顔から血の気が引いていくのが分かりました。

「……すまなかった」

小さく、絞り出すような声。その後は、誰も何も言いませんでした。

その後の変化

あの日以来、「在宅は楽だ」という言葉は社内で聞かれなくなりました。むしろ、深夜対応を減らすために、チーム全体で仕事を分担する動きが生まれたのです。

あの時、私は誰かをやり込めたくて証拠を出したわけではありません。ただ、自分のやってきたことを、正しく見てもらいたかったのです。

会議室のあの沈黙は、私にとって敗北ではなく、小さな勝利だったと、今でも思っています。

 

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

 

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