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「嘘つけない」と語る彼氏。だが、彼の財布から出てきた“一枚の紙”の方が、ずっと正直だった【短編小説】

嘘つけないと語る彼氏だが彼の財布から出てきた一枚の紙の方がずっと正直だった短編小説

嘘つけない彼氏に惹かれる私

「俺、昔から嘘つけない性格でさ。だから、思ったことは何でも言っちゃうんだよね」

私の彼氏、亮介の口癖でした。
その不器用なまでの正直さに、私は惹かれていました。
この人となら、誠実な関係が築ける。
そう、信じて疑いませんでした。

先週末、亮介は「地元の友達の結婚式なんだ」と言って、一泊で帰省していました。
「いやー、久しぶりに会う奴らと朝まで飲んじゃったよ。楽しかったけど、さすがに疲れたな」と、少し眠そうに笑う彼を見て、私は「お疲れ様」と心から労ったのです。

見つけてしまった、一枚のレシート

その数日後のことでした。
私の家でくつろいでいた亮介が、シャワーを浴びている間に、彼のジャケットがソファからずり落ちました。
拾い上げようとした時、内ポケットからパンパンに膨れた財布が滑り落ち、中から大量のレシートが散らばってしまったのです。

「もう、整理整頓ができないんだから」
苦笑しながらレシートを拾い集めていた私の手が、ぴたりと止まりました。
一枚のレシートに印字された、店の名前と日付。
それは、彼が地元にいたはずの土曜日の夜。
そして店名は、私たちが住む街のお洒落なダイニングバーのものでした。

胸が、どくん、と嫌な音を立てます。
私は吸い寄せられるように、他のレシートにも目を通しました。

『大人二名様』と記載されたイタリアンレストランのレシート。
二つ分のカクテルが注文されている、例のダイニングバーのレシート。
そして、深夜二時に繁華街から彼の家まで利用された、タクシーの領収書。

そこには、彼が語った「地元の友達との飲み会」とは全く違う、誰かとの華やかなデートの軌跡が、あまりにも鮮明に記録されていました。

彼を問い詰めると…

シャワーを終えた亮介が、ご機嫌な様子でリビングに戻ってきます。
私は、静かにテーブルの上にレシートを並べました。
彼はそれを見て、一瞬で顔色を変え、凍りつきました。

「亮介くんって、嘘がつけない性格なんじゃなかったっけ?」

私の静かな問いに、彼は何も答えられません。
彼の口から語られる「正直」という言葉が、いかに軽薄なものだったか。
散らばった紙切れ一枚一枚が、彼のどんな言葉よりも雄弁に、私に真実を語りかけていました。

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

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