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「飲み会来ないとか社会人失格」と怒る先輩。翌週公開された『コンプラ対象者一覧』を見て絶句【短編小説】
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金曜夕方の憂鬱
金曜日の夕方になると、私の胃はキリキリと痛み始めます。週末の解放感よりも先に、あの先輩の「号令」への恐怖が勝るからです。
「よし、今週も終わったな! 全員行くぞ、飲みニケーションだ!」
赤ら顔で声を張り上げる先輩は、私の部署の古株です。仕事は早いのですが、価値観が昭和で止まっているのが玉に瑕。その日、どうしても外せない用事があった私は、勇気を振り絞って言いました。
「すみません、今日はどうしても外せない先約がありまして……」
一瞬、フロアの空気が凍りつきました。先輩は信じられないものを見るような目で私を睨みつけ、吐き捨てるように言ったのです。
「はあ? 新人の分際で俺の誘いを断るのか? お前な、飲み会も仕事のうちだぞ」
「申し訳ありません、ですが……」
「これだから最近の若いのは使えないんだ。協調性がないっていうか、はっきり言ってお前、飲み会来ないとか社会人失格だからな」
社会人失格。その言葉は、私の自尊心を粉々に砕きました。帰り道、滲む視界の中で、私は自分の何がいけなかったのかと自問し続けました。
顔面蒼白になった先輩
憂鬱な週末が明け、迎えた月曜日の朝。重い足取りで出社すると、社内の空気が妙にざわついていました。PCを立ち上げると、全社員宛てに人事部から一通のメールが届いています。
件名は『【重要】コンプライアンス違反に関する注意喚起および対象事例一覧の共有』。
添付されていたPDFファイル『コンプラ対象者一覧』を開いた瞬間、私は息を呑みました。そこには抽象的なルールだけでなく、対象者の所属とフルネームがはっきりと記されていたのです。
そのリストに先輩の名前もありました。
恐る恐る視線を上げると、斜め向かいの席で、先輩がモニターを凝視したまま石のように固まっていました。その顔からは血の気が失せ、額には脂汗が浮かんでいます。
周囲の社員も、無言でリストと先輩を見比べては、気まずそうに視線を逸らしていました。
全社員への一斉送信による、事実上の「公開処刑」でした。
誰が通報したのか、あるいは人事部がどこかで見ていたのかは分かりません。しかし、その『一覧』の効果は絶大でした。
その日以降、先輩は借りてきた猫のように大人しくなり、強制的な誘いは一切なくなりました。「社会人失格」のレッテルを貼られた私が救われたのは、会社が突きつけた一枚の冷徹な「リスト」だったのです。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
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※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。
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