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「結婚を考えられない」と私を振った彼。→1年後、面接官として出会った私に彼は絶句【短編小説】

結婚は考えられないと振った彼→1年後彼の上司として出会った私に絶句短編小説

 

「……悪いけど、ミサキとは結婚を考えられない」

カフェの窓越しに差し込む夕陽の中、彼は淡々とそう言った。
3年の交際で、次は一緒に暮らす未来を描いていた私には、その言葉は氷のように冷たかった。

理由を聞くと、彼はコーヒーをひと口すすりながら答えた。
「ミサキは仕事に夢中すぎる。家庭を守る姿が想像できないんだ」

意味がわからなかった。
むしろ私は、仕事も家庭も両立できる自信があった。
それでもその場では、何も言い返せず、ただ目の前が滲んでいくのを止められなかった。

 

彼の一言で走り出した1年

悔しさと失恋の痛みが、心の奥で混ざり合い、私を前に進ませた。
「家庭的じゃない」と言われたなら、私なりの武器で証明してやればいい。そう腹をくくった。

それからの日々、私は仕事に全力を注いだ。
無難に出していた企画書は、納得できるまで徹夜で練り直し、プレゼン資料は細部まで作り込み、休日は資格勉強と業界研究に費やした。

気づけば、同僚や上司が「最近のミサキ、なんだかすごく頼もしいね」と口にするようになっていた。
そして一年後、私はついに企画部のリーダーというポジションを手に入れた。

面接室での再会

その日、新規プロジェクトの面接官として、候補者リストを確認していた私は、ある名前で手を止めた。
──タケシ。
かつての恋人で、私に別れを告げたあの人だ。

やがてドアが開き、彼が入ってきた。
相変わらず自信満々な笑みを浮かべて椅子に座るが、まさか目の前の面接官が元恋人だとは思っていないだろう。

私は淡々と面接を進めた。
彼の自己PRは熱を帯びていたが、その熱の裏にある軽さも、私は知っている。

「タケシさん、当社でどんな1年後を描いていますか?」
そう尋ねると、彼は一瞬だけ視線を揺らした。
──未来を理由に私を手放した人が、今、未来について私に語ろうとしている。

面接が終わり、私は同僚に静かに告げた。
「今回は見送ることになりそうです」

彼の言葉が、あの日の私を変えた。
そして今日、彼の未来を変えるかどうかは──この私が決めることだった。

 

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

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