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亡くなった彼から届いたLINE。→3年越しのメッセージに、涙が止まらない【短編小説】

彼を失ってから3年。私の時間は、あの日から止まったままだった。
スマホに残された彼とのLINEのトーク履歴。スクロールするたびに、楽しかった思い出が蘇ってくる。最後のメッセージは、彼が事故に遭う前日のもの。
「明日、会えるのを楽しみにしてるね」
私の返信は、彼の安否を尋ねる未読のメッセージで埋め尽くされていた。
私は毎日、彼のLINEを開いては、新しいメッセージが届く奇跡を願っていた。
止まってしまった時間
彼のいない日常は、色を失ったようだった。周りの友人たちが新しい恋を見つける中、私は彼の思い出の中に閉じこもっていた。
SNSで見る幸せそうな笑顔を見るたび、「どうして私だけ」という思いが頭をよぎる。そんな私の唯一の支えは、彼のスマホに残された、温かい言葉だった。
特に、私たちの記念日に送ってくれたメッセージは、何度も読み返した。彼の優しさに触れるたび、もう彼に会えない現実が、私の心を締め付ける。
届いた、3年越しのメッセージ
そんなある日の夜。スマホが通知音を鳴らした。画面には、見慣れた彼のアイコン。しかし、表示されたアカウント名は「ハルト」。
まさか…。驚きと恐怖で固まっていると、メッセージが届いた。
「美咲さん、お久しぶりです。ハルトの妹です。兄のスマホが見つかったので、私からメッセージを送っています」
彼の妹からのメッセージだった。彼のスマホが、壊れた状態で見つかり、この度修理に出していたのだという。そして、彼のスマホのメモ帳に残された、未送信のメッセージを見つけたと。
「…お兄ちゃん、美咲さんの誕生日に送ろうとしていたみたいです。よかったら、今から送ってもいいですか?」
私の心臓は高鳴り、涙が溢れて止まらなかった。彼が最後に送ろうとしていた言葉。 それは、止まったままだった私の時間を、動かすためのメッセージだったのかもしれない。
「美咲、誕生日おめでとう。君と出会って、俺の世界は輝き出した。これからも、ずっと隣で笑っていてほしい。だから、俺、本気で結婚を考えてる。俺と・・・」
それは、決して叶うことのない、世界で一番悲しくて、一番嬉しい約束だった。 彼のいない世界で、私はプロポーズを受けた。
私はスマホを強く握りしめた。嗚咽の合間から、途切れ途切れに言葉が漏れる。
「…はい。喜んで…」
返事をすることのできない彼への、たった一度の返事。
3年間、止まっていた私の時間が、再び動き出す音がした。彼の愛を道しるべに、私は明日から、彼の分まで精一杯生きていく。
それが、彼のプロポーズに対する、私なりの「答え」なのだから。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
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