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私の誕生日に「プレゼント忘れた」と言った彼。数年後、贈り物をする相手がいなくなっていた【短編小説】

私の誕生日にプレゼント忘れたと言った彼数年後贈り物をする相手がいなくなっていた短編小説

誕生日、プレゼントを忘れた彼

「あ、ごめん!栞の誕生日プレゼント、すっかり忘れてたわ。まあ、また今度でいいよな?」

数年前の私の誕生日。
お祝いのディナーの最後に、当時付き合っていた彼、浩司は悪びれる様子もなくそう言って笑いました。

プレゼントそのものが欲しかったわけではありません。
私の、一年に一度の大切な日を、彼が全く気にかけていなかったという事実。
その無関心さが、何よりも、私の心を深く傷つけました。
その出来事がきっかけで、私たちは、ほどなくして別れました。

それから、数年後。

私は、今の夫である達也と出会い結婚しました。
彼は、浩司とは正反対の、とても誠実な人。
私の誕生日には、いつも、心のこもった贈り物で、私を喜ばせてくれます。

デパートで会った彼が持っていたのは

先日、そんな夫の誕生日プレゼントを選ぶため、私は仕事帰りにデパートへ立ち寄っていました。
革製品売り場で、財布を品定めしていると、すぐ隣から、聞き覚えのある声がしたのです。

振り向くと、そこにいたのは、浩司でした。

気まずい雰囲気の中、ぎこちなく挨拶を交わします。
私の手にあるプレゼント用の袋に気づいた彼が、「誰かに贈り物?」と尋ねました。

「ええ、夫の誕生日が、もうすぐなので」

私が「夫」という言葉を口にすると、彼の顔が、一瞬、寂しそうに曇ったのを、見逃しませんでした。

ふと見ると、彼の手にも、綺麗にラッピングされた小さな箱が。
私が「浩司くんも、プレゼント?」と聞き返すと、彼は、自嘲するように力なく笑いました。

『…ああ、これな。彼女の誕生日プレゼント、ちゃんと用意してたんだ。でも、ついさっき、電話で振られた』

今日は、彼の恋人の誕生日。
これから、お祝いのディナーの約束があったのだと。
しかし、その直前に、彼女から、別れを告げられてしまったそうです。

彼は、贈るはずだったプレゼントを手に、贈る相手を失ってしまった。

私の誕生日を忘れ、私を失った、かつての彼。
恋人の誕生日を覚え、プレゼントを用意したのに、恋人を失った今の彼。

あまりにも皮肉な結末に、私は、かける言葉が見つかりませんでした。
デパートの華やかな喧騒の中、一人、立ち尽くす彼の背中が、やけに、小さく見えたのでした。

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

 

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※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。

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