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「俺が教えて滑れなかった奴はいない」豪語する夫に連れてかれた雪山。豹変したモラハラ指導に堪忍袋の緒が切れた日

「俺が教えて滑れなかった奴はいない」豪語する夫に連れてかれた雪山。豹変したモラハラ指導に堪忍袋の緒が切れた日

根拠のない「絶対」という言葉

「いいか、俺が教えて滑れるようにならなかった奴なんて、これまで一人もいないんだ。絶対大丈夫だから、俺を信じろ」

夫の口から飛び出した、あまりに無責任で根拠のない自信。それが、すべての悲劇の幕開けでした。

私はもともと運動神経とは無縁の人生を送ってきた人間です。

おまけに高所恐怖症。

そんな私がスキーに消極的なのは、結婚前からの周知の事実だったはずです。

しかし、結婚して数年。

30代後半に差し掛かったある日、夫は突然「スキーに行こう」と強硬に言い出しました。

「ねえ、もう若くないのよ?体力的にも厳しいし、もし怪我でもしたら仕事はどうするの?」

「心配しすぎだって。俺の言う通りにすれば、すぐにスイスイ滑れるようになるから」

何度断っても、返ってくるのは楽観的な空論ばかり。結局、私は彼の熱意(という名の押し付け)に根負けし、真っ白な銀世界へと連れて行かれたのです。

雪原に響く怒声と、置き去りの孤独

いざゲレンデに立つと、夫の態度は180度豹変しました。

「優しく教える」と言っていた面影はどこへやら、私のぎこちない動きを見るなり、あからさまに苛立ちを隠さなくなったのです。

「……チッ、もういい。俺は上から滑ってくるから、お前は勝手にここで練習してろ」

吐き捨てるようにそう言い残すと、夫は一人でリフトへと消えていきました。

凍てつく風が吹き抜ける中、私はたった一人、山の麓でスキー板を横にして雪を噛む「カニ歩き」を繰り返します。

登っては滑り、転んでは起き上がる。その情けなさと惨めさは、今思い出しても胸が締め付けられます。

別の日、さらに私を追い詰める出来事が起きました。

「ここなら人がいないから、思い切り滑ってみろ」と連れて行かれたコース。

ところが、滑り出そうとした矢先、目の前に3、4人のスノーボーダーたちが座り込んでしまったのです。

初心者にとって、コースを塞ぐ彼らは巨大な壁も同然。

「危ない、ぶつかっちゃう……。一度板を外して歩こうかな」

不安で立ち尽くす私に、遠く離れた場所から夫の怒鳴り声が飛んできました。

「そのまま突っ込め!止まるな、滑れ!」

「無理よ! あんなに人がいたら避けられないわ!」

すると夫は、座り込んでいる若者たちには「すみませーん、すぐ避けさせますからね!」と、いかにも申し訳なさそうな愛想笑いを浮かべたのです。その直後、私には鬼のような形相で指示を飛ばします。

「そっちに行くな、こっちだ!なんでそんなこともできないんだ!」

狭いコース、避けようのない障害物。

無理難題を押し付けられ、二度トライしても結局彼らの近くで転んでしまった私に、夫の「何やってんだ!」という怒声がさらに突き刺さります。

(……ああ、もう、終わりだ)

その瞬間、心の中で「プツン」と何かが切れる音がしました。

私は一言も発さず、無言でスキー板を外しました。驚いてこちらを見る夫を完全に無視し、座り込んでいる人たちの脇を、ツボ足で一歩、また一歩と踏みしめながら、駐車場へ向かって歩き出したのです。

自分の限界を守れるのは、自分だけ

その後も何度か「また練習しに行こう」と誘われましたが、あの雪山での不快な記憶が消えることはありませんでした。

「何度やっても、無理なものは無理。二度と行かないわ」

最後はきっぱりと、そう告げました。

夫婦だからといって、必ずしも同じ趣味を共有し、同じ熱量で楽しめるわけではありません。特に安全や恐怖心が関わる場面では、自分の限界を一番理解し、守れるのは自分だけなのだと痛感しました。

あの日以来、私の冬にスキー板が登場することはありません。

冷たい雪の上ではなく、暖かい部屋で自分の時間を大切にする。それが私にとっての、正解の冬の過ごし方なのです。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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GLAM Lifestyle Editorial

編集部

日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。

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