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「謝れば済むと思ってんのか!」と1時間電話を切らない客。だが、クレームの矛盾を指摘すると…【短編小説】

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
しつこいクレーマー
「謝れば済むと思ってんのか!」
受話器から耳を突き刺すような怒声が響いたのは、外の光が少し傾き始めた午後三時のことでした。
私はカスタマーサポートの窓口で働く、ごく普通の会社員です。
この仕事に就いてから三年。
それなりに多くのクレームに対応してきた自負はありましたが、今日の相手は一段と手強い予感がしました。
お客様の言い分はこうです。
「昨日届いたキッチン家電が全く動かず、楽しみにしていた家族のお祝いが台無しになった。この埋め合わせはどうしてくれるんだ」というもの。
私はまず、不快な思いをさせたことに対して何度も誠心誠意、謝罪の言葉を述べました。
しかし、相手の怒りは収まるどころか、火に油を注ぐばかり。
「言葉だけの謝罪なんていらないんだよ!」と、怒鳴られ続けて既に一時間が経過していました。
精神的な疲労がピークに達しそうになったその時、私は相手の話の中に奇妙な違和感を覚えました。
怒りに任せてまくしたてる彼の言葉を冷静にメモし、手元の顧客データと照らし合わせてみたのです。
「お客様、念のため確認させてください。その商品は間違いなく『昨日』お手元に届き、昨夜お使いになろうとしたのですね?」
「当たり前だろ! 何度言わせるんだ。昨日の夜、箱を開けて使おうとしたらピクリとも動かなかったんだよ!」
男性はさらに語気を強めました。
話を整理すると…
しかし、私の画面に表示されている配送記録は、それとは正反対の事実を突きつけていました。
「……恐れ入ります。弊社のシステムで配送状況を確認いたしましたところ、お客様がお求めになった商品は配送ルートの混雑により到着が遅れておりました。お届けが完了したのは、つい先ほど、本日の午後二時となっております」
電話の向こうが、急に静まり返りました。
「え……?」
「配送業者からの完了報告も、今からわずか一時間前の時刻で記録されております。昨日の夜の時点では、商品はまだ配送センターに保管されていたはずなのですが……」
沈黙が十秒ほど続きました。
先ほどまでの威圧的な態度はどこへやら、受話器からは困惑したような吐息だけが漏れています。
「あ……。いや、その、なんだ……」
先ほどまでの威勢はどこへやら、男性の声はみるみる小さくなっていきました。
「……本当に、申し訳ございません! 別のショップで買ったものと完全に勘違いしていました! 」
先ほどまでの一時間が嘘のように、男性は何度も、何度も、消え入るような声で謝罪を繰り返しました。
「本当に失礼なことをしました」と、最後にはこちらが恐縮するほど平身低頭な様子で電話は切れました。
怒鳴られ続けた一時間は散々でしたが、最後にあれだけ真っ青になって謝る姿を想像すると、少しだけ肩の荷が下りたような、不思議な爽快感を覚えた出来事でした。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。
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