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「この卵、割れてるから交換しろ」と怒鳴り散らかす客。だが、他の客が告げた事実に態度が一変【短編小説】
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本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
卵が割れてるという客
夕方のスーパーマーケットでの出来事です。
私はいつものように、レジ打ちのパートをしていました。
その日は特売日ということもあり、店内は非常に混雑していました。
私のレジにも長蛇の列ができ、息をつく暇もないほどでした。
そんな時、ある中年男性の順番が回ってきました。
カゴを乱暴にカウンターに置くなり、彼は突然、大きな声を張り上げました。
「おい! この卵、割れてるじゃないか! どうなってんだ!」
男性が指さしたのは、カゴの中にある10個入りの卵パック。
確認すると、確かに端の卵にヒビが入っています。
「大変申し訳ございません。すぐに新しいものと交換いたします」
私が頭を下げると、男性はさらにヒートアップしました。
「管理がなってないんだよ! 俺が気づかなかったら不良品を買わされるところだったぞ! 店長を呼べ!」
男性の怒声に、周りのお客様も驚いてこちらを見ています。
私は恐怖で足がすくみ、言葉が出てきませんでした。理不尽なことは分かっていても、とにかく謝り続けるしかありません。
割れた原因は…
その時です。
「あの、ちょっといいかしら」
男性の後ろに並んでいた、上品な年配の女性が静かに声を上げました。
「私、見ていましたよ。さっきパン売り場の角で、あなたがそのカゴを落としたのを」
男性の動きがピタリと止まりました。
「ご自分で落として割ったものを、店員さんのせいにして怒鳴るのは筋違いじゃないかしら? 誰だって失敗はあるけれど、それは格好悪いわよ」
女性は穏やかな口調ながらも、毅然とした態度で告げました。
周りのお客様たちも「ああ、やっぱり」「自分でやったのか」といった空気で男性を見つめます。
顔を真っ赤にした男性は、一瞬何か言い返そうとしましたが、周囲の視線に耐えられなくなったのでしょう。
「……もういい!」
そう捨て台詞を吐き、卵を置いたまま、逃げるように店を出て行ってしまいました。
「大丈夫? 怖かったわよね」
女性は私に優しく微笑みかけてくれました。
私は安堵のあまり涙が出そうになりながら、何度も何度もお礼を伝えました。
勇気を出して助けてくれたあのお客様には、感謝してもしきれません。理不尽なトラブルの中で触れた、人の温かさが心に染みた体験でした。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。
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