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上司「もう一軒行くよな?」断れない空気…だが、タクシーに乗り込んだ同僚の機転に救われた【短編小説】

絶望のタクシー乗車
金曜日の夜、時計の針はすでに23時を回っていました。
プロジェクトの打ち上げという名目で開催された飲み会は、一次会ですでに3時間が経過。私の身体はとっくに限界を訴えていました。
頭の中にあるのは「メイクを落として早くベッドにダイブしたい」という切実な願いだけです。
しかし、店の前で上機嫌に赤ら顔を晒している上司の様子を見る限り、その願いは簡単には叶いそうにありませんでした。
「いやー、今日は楽しかったな! よし、まだ電車はあるけど、タクシーでもう一軒行くよな?」
その場に残っていたのは、私と同年代の女性の同僚、そして上司の三人だけ。
「すみません、明日は早くて……」という言葉が喉まで出かかりましたが、上司の圧と「俺の奢りだぞ」という無言の空気に気圧され、私は曖昧な愛想笑いを浮かべることしかできませんでした。
チラリと同僚の方を見ると、彼女も困ったように眉を下げています。
(あぁ、これは完全に朝までコースだ……)
絶望的な気持ちで、通りかかったタクシーを止めました。上司が先に奥の座席へ乗り込み、私たちが続きます。
上司が運転手さんに行きつけのスナックの場所を告げようと口を開いた、その瞬間でした。
同僚の「愛ある嘘」
隣に座った同僚が、スッと身を乗り出したのです。そして、驚くほどはっきりとした声で運転手さんにこう言いました。
「運転手さん、まずは○○駅(上司の最寄駅)までお願いします。高速を使って最短ルートで急いでください」
上司が「え?」と呆気にとられた顔をして振り返ります。
同僚はすかさず、慈愛に満ちたような優しい笑顔で上司に向き直りました。
「部長、さっき少し顔色が優れなかったですよ。これ以上お連れして、もし体調を崩されたら、私たち責任が取れません。奥様も心配されますし、今日はどうかお体を休めてください」
それは「あなたの体調を気遣っています」という体裁をとった、完璧な「帰宅命令」でした。
さらに彼女は「私たちも、部長にかっこいいままでいてほしいですから」と追い討ちをかけます。ここまで言われては、上司も「いや、俺は元気だ」と駄々をこねるわけにはいきません。
「……まぁ、君たちがそこまで言うなら、仕方ないな」
上司は少しバツが悪そうに、しかし満更でもない様子で座席に背中を預けました。
結局、上司を最寄駅で降ろした後、タクシーの中は私たち二人だけに。
その瞬間、どちらからともなくハイタッチを交わしました。あの時の同僚の頼もしい横顔と、静かになった車内で吸った空気の美味しさは、きっと忘れないと思います。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
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※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。
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