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取引先「これ、御社にしか頼めないんです…」と頭を下げられた日。見積書に書かれた呆れた一文【短編小説】

取引先のSOS
あの日のことは、今でも鮮明に覚えています。
昼下がりのオフィスで慌ただしくキーボードを叩いていると、受付から内線が入りました。
「〇〇様(取引先)がお見えですが、アポは…」
「え? 入ってないけど…」
急いで入り口に向かうと、いつもは穏やかな取引先の担当者さんが、今にも泣きそうな顔で立っていました。
会議室に通すやいなや、彼は勢いよく立ち上がり、
「本当に申し訳ありません! これ、御社にしか頼めないんです…!」
と、テーブルに頭がつくほど深々と下げたのです。
聞けば、急な仕様変更で大トラブルが発生し、どこも対応してくれず、藁にもすがる思いでうちに来たとのこと。
提示された納期は、無茶を通り越して「無謀」としか言えないものでした。
上司も私も頭を抱えましたが、彼の必死な様子に「なんとかするしかない」という空気が流れました。
「…わかりました。ただし、通常料金とはいきません。特急対応になります」
そう伝えると、彼は「もちろんです!」と力強く頷きました。
そこからが戦場です。私は大急ぎで他部署への応援要請や必要なコストを計算し、特急料金を上乗せした見積書を作成しました。金額は予想通り、かなりの額になりました。
「これで納得してもらうしかない…」
上司のチェックを経て、祈るような気持ちで取引先にメールで送付しました。
あとは返事を待つだけ…と思っていたら、数分もしないうちに、メールの受信音が鳴りました。
取引先からです。
「(早いな!もう発注かな?)」
軽い気持ちでメールを開き、添付されていたPDFファイルを開きました。
それは、私が今しがた送った見積書を、先方がプリントアウトしてスキャンし直したものでした。
そして、そこに信じられない一文が「赤ペン」で手書きされていたのです。
上司も呆れた一文
私は呆気に取られ、慌ててそのPDFをプリントアウトして上司のところに走りました。
「すみません、これ見てください! 取引先から返信が来たんですけど!」
上司は「どうしたんだ」と面倒くさそうにその紙を受け取りましたが、すぐに眉をひそめました。
「…なんだこれは」
見積書の中で一番大きな金額になっていた『特急対応費』の項目。
そこに、担当者さんの字で、こう書かれていました。
『こちら、友情価格 ということでサービス希望』
「友情価格…? こっちは深夜残業と休日出勤で対応するっていうのに…」
上司は呆れ果てて、言葉を失っています。
あれだけ頭を下げて無茶な依頼をしておいて、「サービスしてくれ」と冗談でも書く神経が信じられません。
あまりに呆れた一文に、私と上司が顔を見合わせていると、すぐに私のデスクの電話が鳴りました。
「すみません!! さっきのは絶対見ないでください!! 冗談です!! 悪ふざけが過ぎました!! もちろん全額お支払いします!!」
電話口から聞こえる、担当者さんの今にも泣き出しそうな声でした。
「…まったく、心臓に悪い冗談だ」
上司は苦笑いしていましたが、私は本気で「この話、お断りします」と言おうかと思いました。
結局、その「友情価格」と書かれた見積書は破棄し、クリーンなものを再送付してもらいましたが、あの「呆れた一文」は、その後しばらく、私たちの部署で伝説として語り継がれています。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
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※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。
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