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「お前のせいで家を売ることになる」と責められた私。→数年後、もめたのは彼らだけだった【短編小説】

お前のせいで家を売ることになると責められた私→数年後もめたのは彼らだけだった短編小説

相続でもめた親族

数年前、祖母が亡くなった時のことです。

遺されたのは、古い一軒家と、わずかな預金。
正式な遺言がなかったため、相続について、親族で話し合いの場が持たれました。

穏やかだった祖母の思い出とは裏腹に、その場は、叔父の浩二と叔母の典子の、醜い言い争いの場と化しました。
叔父は「長男である自分が家を継ぐのは当然だ」と主張。
しかし、代襲相続人である私にも、法的に定められた分の遺産を受け取る権利があります。
私がその分を現金で受け取るとなると、家を売却せざるを得ない。その事実が、彼らを豹変させました。

叔母が、私を睨みつけて言いました。

『おばあちゃんの介護を全部私たちに押し付けて、遠くでのうのうと暮らしていた静香が、今になってお金だけ要求するなんて。あなたのせいで、お父さんとの思い出が詰まったこの家を、売ることになるのよ!』

叔父も、それに続きます。

『そうだぞ。静香が欲を捨てて、相続を放棄すれば、すべて丸く収まるんだ!』

すべての原因は、私にある。
彼らは、私を「思い出の家を壊す、欲深い裏切り者」に仕立て上げたのです。

この状況が辛かった…

私は、もう、うんざりでした。
彼らが守りたいのは、家や思い出などではなく、自分たちの利益だけ。
私はその場で、「相続を放棄します」と宣言し、一切の権利を手放したのです。

それから、数年が経ちました。

先日、いとこの結婚式で、久しぶりに親戚と顔を合わせ、その後の顛末を耳にしたのです。

私が相続を放棄した後、叔父と叔母の争いは、さらに激化していました。
「家を守る」と言っていたはずの彼らは、すぐに売却の話を進め、その売却価格や税金の支払いですら、揉めに揉めたというのです。
兄弟の縁は、完全に切れてしまいました。

結局、財産のほとんどは、裁判費用や税金で消え、彼らの手元には、ほんのわずかなお金と、修復不可能なほどの深い溝だけが残りました。

「相続でもめるのはお前のせいだ」と私を責めたてた、あの二人。
蓋を開けてみれば、私が去った後も、ずっと、もめていたのは彼らだけでした。
争いの原因は、私ではなく、彼ら自身の、強欲な心だったのです。

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

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