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彼のスマホに届いた通知。そこから、完璧な彼氏の『裏の顔』を知る地獄が始まった【短編小説】

彼氏のタケルは、私にとって完璧な存在だった。穏やかで優しく、私の話をいつも真剣に聞いてくれる。仕事はバリバリこなし、家事も手伝ってくれる。友人にも「本当に良い彼氏だね」と羨ましがられる、非の打ち所がない人。私たちは結婚も視野に入れ、幸せな未来を信じていた。
その地獄は、ある夜、ふとしたきっかけで始まった。
彼がシャワーを浴びている間、ソファでくつろいでいた私の隣のテーブルに、彼のスマホが置かれていた。通知はOFFにしているはずなのに、画面が一瞬光り、「〇〇の投稿にいいねしました」という通知が表示された。見慣れないアイコンとアカウント名。それが、地獄への入り口だった。
知られざるもう一つの顔
好奇心に駆られた私は、彼のスマホを手に取り、そのアカウントを検索した。そこに映っていたのは、私が知るタケルとは全く違う男の姿。夜の街で大勢の男女と騒ぎ、高級ブランドの服を身につけ、私とは真逆の派手な生活を送っている。
さらに、彼のフォローリストをたどると、そこには私には見せたことのない、たくさんの女性たちがいた。「○○ちゃん可愛い!今度また飲もうね」「また美咲のことディスってるよ」…美咲?私のこと?
彼の投稿には、「地味でつまんない彼女と別れたい」と書かれたものもあった。その投稿に、知らない女性たちから「やめときなよ、タケルはもっといい子いるじゃん」と返信がついていた。私の心臓は、恐怖と絶望で冷たくなっていきました。
完璧な彼は、存在しなかった
シャワーから戻ってきたタケルは、私の顔色を見てすぐに異変を察したようです。「どうしたの?」と優しく声をかけてきたが、その声がひどく嘘くさく聞こえました。
「タケル…このアカウント、何?」
スマホの画面を見せると、彼の顔から血の気が引いていくのが分かりました。完璧な彼の表情が崩れ、顔は青ざめていました。彼は何も言い訳できず、ただ項垂れるだけ。その姿を見て、私は確信しました。私が愛していた「完璧なタケル」は、最初から存在しなかったのだと。
優しさも、真剣な眼差しも、すべてが彼が演じた“裏の顔”だった。その地獄の底で、私はただ虚しく、彼とのすべての思い出を呪うことしかできませんでした。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
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