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年収1000万の美女が、年収500万・顔面偏差値45の“僕”を選んだ、たった一つの理由【短編小説】

年収1000万の美女が年収500万顔面偏差値45の僕を選んだたった一つの理由短編小説

 

「無理ゲーだろ、これ…」

結婚相談所の会員専用サイトで、僕は絶望していた。年収2000万の医者、身長180cmの外資系コンサル。きらびやかなプロフィールの男性たちが並ぶ中で、僕のスペックはあまりにも平凡だった。

「32歳、メーカー勤務、年収500万、身長172cm」。そして、鏡を見ればわかる、自己採点「顔面偏差値45」の冴えない顔。

マッチングアプリで惨敗を続け、最後の砦として入会したこの場所も、結局はスペック至上主義。僕のような男が選ばれるはずがない。そう諦めかけていた日、カウンセラーから一本の電話が鳴った。

 

なぜ?年収1000万、モデル級美女からの「お見合いOK」通知

「木下さん、お見合いが成立しましたよ。お相手は、こちらの…」

送られてきたURLを開き、僕は自分の目を疑った。そこにいたのは、咲さん(30)。職業、IT企業経営。年収1000万。そして何より、誰が見ても息をのむほどの美女だった。

何かの間違いだと思った。「僕なんかで、いいんですか?」と恐る恐る尋ねると、カウンセラーは「咲さん、ご自身の趣味の欄をとても熱心に見ていらっしゃいましたよ」とだけ言った。僕の趣味…「週末、ひたすら古い万年筆を分解して修理すること」。我ながら、女性ウケ最悪の趣味だ。

ますます訳が分からないまま、僕は約束の日、ホテルのラウンジへと向かった。

 

僕が“たった一つ”だけ、他の男と違っていたこと

現れた咲さんは、写真以上に美しかった。緊張で喉がカラカラになりながら、僕は必死で練習してきた「無難な会話」を繰り出した。仕事のこと、貯金のこと、将来設計のこと…。でも、咲さんの相槌はどこか上の空。明らかに、つまらなそうだ。

(ああ、もう終わりだ…)

惨めな気持ちになった瞬間、何かが吹っ切れた。どうせフラれるなら、最後に好きなことだけでも話して終わろう。

「あの、僕、趣味で古い万年筆を直してまして…」

そこから先は、自分でも驚くほど夢中で話していた。インクの仕組み、ペン先の微妙な調整、何十年も前の職人のこだわり。咲さんは、退屈そうな顔を消し、僕の目をじっと見て、静かに話を聞いていた。

「…面白いですね、それ」

初めて彼女が、心の底から微笑んだ気がした。

 

「あなたの話、初めて面白いと思った」彼女が求めていた“本当のスペック”

驚くことに、僕たちは二度、三度と会うようになった。そして三回目のデートで、咲さんは本音を教えてくれた。

「今まで会った男性、みんな同じ話ばかりだったの。年収がいくらで、どんな車に乗っていて、将来はどこに住みたくて。まるで自分の価値をプレゼンされているみたいで、正直、飽き飽きしてた」

彼女は僕の目を見て、続けた。

「でも、木下さんは違った。万年筆の話をしている時、本当に楽しそうだった。自分のスペックじゃなくて、自分の“好き”を語れる人に、初めて会ったの」

その時、僕は全てを理解した。彼女が求めていたのは、高い年収や整った顔立ちではなかった。ありのままの自分で、何かに夢中になれる「人間味」だったのだ。僕のコンプレックスだった「スペックの低さ」が、逆に僕を他の男たちと差別化する武器になっていた。

 

僕が、最高のパートナーを見つけられた“たた一つの戦略”

僕たちは、半年後に結婚した。

今なら、断言できる。婚活市場は、スペックで戦う場所だと思われている。でも、本当に大切なのは、自分という人間を偽らないことだ。足りないスペックを嘆くより、自分が持つ“たった一つ”の情熱を、自信を持って語ること。

「顔面偏差値45」の僕が、最高のパートナーを見つけられた唯一の戦略は、それだけだったのだ。

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