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貸したルブタンがフリマに!?“ブランド泥棒”の友人をSNSで証拠公開し制裁[短編小説]

「一生のお願い!このルブタン、明日の結婚パーティーに貸してくれない?」
大学時代からの親友であるユナが、私の目の前で手を合わせて拝み込んでいました。彼女が指差すのは、私が初めてのボーナスを全額はたいて買った、クリスチャン・ルブタンの真っ赤なパンプス。私の努力と憧れの結晶でした。
少し迷ったものの、「絶対に汚さないから!」という彼女の言葉と、何より長年の友情を信じて、私は「一度だけだよ」と微笑んで箱を渡しました。それが、まさかあんな悪夢に繋がるなんて、夢にも思わずに。
返ってこないパンプスと、苦しい言い訳
パーティーから一週間が経っても、靴が返ってくる気配はありませんでした。
しびれを切らして「靴、どうなった?」とLINEを送ると、「ごめん!すぐ返す!」と返信が。しかし、そこからユナの言い訳リレーが始まったのです。
「実家のクローゼットの奥に仕舞っちゃって、今出せないんだ」
「完璧な状態にして返したくて、高級クリーニングに出してて…」
会う約束をしてもドタキャンされ、気づけば1ヶ月が経過。私の心には、友情への信頼よりも、黒い疑念が渦巻き始めていました。
フリマアプリで見た、信じられない「出品物」
その夜も、私はモヤモヤした気持ちを抱えながら、暇つぶしにフリマアプリを眺めていました。何気なく靴のカテゴリーをスクロールしていた私の指が、突然、凍りついたように止まります。
そこには、私と全く同じルブタンが出品されていたのです。
心臓が早鐘を打ち始めました。サイズも同じ。商品説明には「友人の結婚式で一度だけ履いた美品です」と書かれている。まさか、と思いながら写真を拡大し、私は息を呑みました。
左足のヒールの内側。そこに、私自身が最初におろした日につけてしまった、ごく小さな傷跡がはっきりと写っていたのです。そして、その靴が置かれている背景の床。それは、ユナの部屋の、特徴的な花柄のラグに違いありませんでした。
出品者の名前は見知らぬものでしたが、証拠は揃っています。そして、商品ページには無情にも「SOLD」の赤い文字が。頭が真っ白になり、裏切られた怒りで全身が震えました。
最後の対話、そして「制裁」への決意
私はすぐにユナに電話をかけ、感情を抑えて問い詰めました。
「ねぇ、私のルブタン、フリマアプリで売らなかった?」
「はぁ?何言ってるの?そんなわけないじゃん!ひどい、私のこと信じてないんだね!」
電話の向こうで、彼女は被害者のように泣き始めました。その白々しい演技に、私の心は完全に冷え切りました。もう、直接対話しても無駄だ。このままでは、私は「友人を疑う悪い人間」に仕立て上げられ、靴もお金も返ってこないまま終わってしまう。
これはもう、靴だけの問題じゃない。私の信頼を踏みにじり、嘘で塗り固めようとする彼女への、最後のけじめをつけなければ。
私は、現代ならではの”制裁”を下すことを決意しました。
SNSで暴かれた、”ブランド泥棒”の全手口
私は、証拠のスクリーンショットを撮り始めました。
- フリマアプリの商品ページ(SOLDの文字入り)
- 小さな傷と、ユナの部屋のラグが写った写真の拡大画像
- 「絶対に汚さないから貸して!」と懇願する、1ヶ月前のLINEのやり取り
そして、私たちの共通の友人が多くフォローしている、私のSNSアカウントに、それらの画像を淡々とした文章と共に投稿したのです。
大切なものを人に貸すということについて、とても勉強になりました。
親友に「一晩だけ」と貸した私の大切なルブタンが、数々の嘘の末に、フリマアプリで売られていました。証拠は写真の通りです。
購入された方、どうぞ大切に履いてあげてください。
そして、私を裏切った”友人”へ。私たちの友情も、これで「SOLD OUT」です。皆さんも、大切なものを貸す時は気をつけてくださいね
ユナを名指しにはしませんでした。ですが、証拠を見れば、誰のことかは一目瞭然でした。
友情の値段
投稿から1時間もしないうちに、私のスマホは共通の友人たちからの驚きと励ましのメッセージで鳴り止まなくなりました。そして、ついにユナ本人から、鬼の形相が目に浮かぶような着信が。
「今すぐあの投稿消して!」
半狂乱で叫ぶ彼女に、私は静かに答えました。
「あなたが本当のことを言って、私に謝ってくれれば、こんなことにはならなかった。これは、あなたが私にしたことの当然の結果だよ」
その後、彼女の口座から、靴が売れた金額に迷惑料を上乗せした額が振り込まれているのを確認し、私は投稿を削除しました。もちろん、私たちの友情が元に戻ることは、二度とありませんでしたが。
大切な靴は失いましたが、私は泣き寝入りする被害者になることだけは拒否しました。友情の値段は、フリマアプリでつけられた数万円より、ずっと安かったようです。
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