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「急遽出張だわ」と言う夫。土産のTシャツを着て帰ってきたが、そこに写る写真で嘘がバレたワケ【短編小説】

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
出張だと言う夫
「悪い、急遽出張だわ、北海道に行くわ」
夫がそう切り出したのは、金曜の夜のことでした。
普段から仕事熱心な彼のこと、疑う余地などありません。
「向こうはまだ寒いかもしれないから」と、私は厚手のダウンジャケットやヒートテックをスーツケースに詰め込み、彼を送り出しました。
「海鮮丼、楽しみにしてるね」
そう声をかけた私に、夫は「ああ、期待しててくれ」と真面目な顔で頷いて出て行きました。
そして日曜日の夜。
「ただいまー!」 玄関のドアが開くと同時に、なぜか南国の風のような、甘いココナッツの香りがふわりと漂いました。
出迎えた私は、夫の姿を見て言葉を失いました。
あんなに心配して持たせたダウンジャケットは小脇に抱えられ、彼の体にはペラペラの半袖Tシャツ一枚。しかもその胸元には、コバルトブルーの海と真っ赤なハイビスカス、そしてシーサーが写った鮮やかな写真がデカデカとプリントされています。
問い詰めた結果
「え……あなた、その服」
私が指さすと、夫は一瞬ハッとした顔をして、慌ててジャケットで胸元を隠そうとしました。
「い、いや! これはだな、帰りの新千歳空港で『全国うまいもの博』みたいなのをやってて……そこで買ったんだ! 北海道だけど沖縄気分、みたいな?」
苦しい言い訳をする夫の肌は、金曜日に見たときよりも明らかにこんがりと小麦色に焼けています。
「北海道の物産展で、わざわざそんな『THE 沖縄』なTシャツ買って、しかも着て帰ってくるの?」 私は冷ややかな声で問い詰めました。
「そ、そうだよ! たまたま服を汚しちゃって、着替えるのにちょうどよくて……」
「へえ。じゃあ、そのTシャツに書いてある『OKINAWA MIYAKOJIMA』っていうロゴも、北海道限定のデザインなの?」
夫は言葉に詰まり、視線を泳がせました。
「それに、あなたの日焼け。雪の照り返しでそんな風に焼けるわけないでしょ」
私の追求に、夫は観念したようにその場に座り込みました。
結局、北海道出張は真っ赤な嘘。
会社の若い女性社員と宮古島へ「避暑旅行」に行っていたことを白状しました。
浮かれた気分で買ったお土産のTシャツを、帰りの飛行機で着てしまい、そのまま家まで帰ってくるという間抜けさが命取りとなったのです。
南国の写真がプリントされたそのTシャツを見るたびに、怒りがこみ上げてきます。
もちろん、夫にはそのTシャツ一枚で家から出て行ってもらいました。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。
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