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「ママ、あの人また来た」玄関前に置かれた差出人不明の贈り物。子供だけが見てた差出人の正体【短編小説】

差出人不明の贈り物
その異変が始まったのは、数週間前のことでした。
朝、子供を幼稚園に送ろうと玄関のドアを開けると、足元に小さな紙袋がちょこんと置かれていたのです。きれいな花柄の袋の中には、可愛らしい動物のクッキーが入っていました。
「あら、どなたかしら? お隣さんかな」
その時は、深く考えませんでした。このあたりは親切な方が多いので、きっとどなたかが子供にと持ってきてくださったのだろう、と。
しかし、その「贈り物」は一度きりではありませんでした。
三日後には小さなハンドタオルが、一週間後には子供が好きそうなキャラクターの絆創膏が。決まって、私が在宅している日中の、ほんの少し目を離した隙に置かれていくのです。
差出人の名前はなく、メモも入っていません。
誰かが私と子供の生活を知っている……そう思うと、最初はありがたいと思っていた気持ちが、だんだんと薄気味悪いものに変わっていきました。
私はなるべく物音がしたら玄関を覗くようにしましたが、差出人の姿をとらえることはできませんでした。
不安が温もりに変わった日
そんなある日の昼下がり。私が洗い物をしていると、リビングで遊んでいた子供が窓に駆け寄り、外を見ながら言いました。
「あ! ママ、あの人また来た」
私は慌てて手を拭き、玄関に走りました。勢いよくドアを開けましたが、そこには誰もいません。ただ、いつものように小さな紙袋が置かれているだけでした。中身は、色とりどりの折り紙でした。
「いま、誰かいたの? どんな人だった?」
肩で息をしながら子供に尋ねると、子供はきょとんとした顔で私を見上げました。
「うん。いつもお花にお水をあげてる、おばあちゃん」
その言葉に、私はハッとしました。
思い当たる人が一人だけいます。家の向かいに一人で住んでいる、いつも庭先で草花の手入れをしているおばあちゃんです。
そういえば、以前子供が家の前で転んで泣いていた時、そのおばあちゃんがゆっくりと近づいてきて、絆創膏を貼ってくれたことがありました。
人付き合いがあまり得意ではない方なのか、私がお礼を言ってもいつも恥ずかしそうに会釈するだけでした。きっと、今回も真正面から渡すのが照れくさかったのかもしれません。
差出人が分かった途端、あれほど感じていた不安が、ふわりと温かいものに変わっていくのを感じました。
「そっか。今度、あのおばあちゃんに、ありがとうって言いに行こうね」
子供は「うん!」と元気よく頷きました。恐怖の正体は、私たちを静かに見守ってくれていた、不器用な優しさだったのです。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
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※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。
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