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「至急報告してください」LINEグループで晒された私のミス。同期が明かした意外な結果とは【短編小説】
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月曜の朝、見たくないLINE
月曜、朝8時45分。
佐藤健太は、満員電車の揺れに耐えながら、スマホの画面を凝視していた。
胸が早鐘のように鳴っている。
原因は、今朝8時ちょうどに「営業二課 共有」のLINEグループに投下された、鈴木リーダーからのメッセージだった。
【営業二課 共有 (15)】
鈴木:昨日の日曜、クライアントの○○○○マート様から緊急連絡あり。
鈴木:土曜に納品したはずの週次レポートが、先方システムに反映されていないと。
鈴木:佐藤さん、土曜の対応当番だったな。対応状況、至急報告してください。
グループには15人がいる。
部長も、課長も。 その全員が見ている前での、名指しの詰問だった。
健太の背中に、冷たい汗がじっとりと滲む。
(やった。絶対に、やったはずだ) 土曜日の昼、確かに自宅のPCからクライアントの共有フォルダにデータをアップロードした。
はずだった。 いや、でも、もし「はず」だったら?
健太:お疲れ様です。佐藤です。
健太:ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ありません。
健太:土曜日の14時頃に、指定フォルダへアップロード処理を行った認識です。すぐにログを確認いたします。
送信した直後、既読が一気に「8」まで増えた。
心臓が縮み上がる。 鈴木リーダーからの返信は、早かった。
鈴木:認識、じゃ困る。
鈴木:今、○○○○マートの担当者様はカンカンだ。月曜朝の会議で使うデータが飛んでるんだから当然だ。
鈴木:そもそも、アップロード後に先方へ「完了報告メール」を送るルールになってるだろう。なぜ送ってない?
その指摘に、健太は息を飲んだ。
(しまった……) 急いでいたこともあり、アップロードが完了したのを見届けて、そのままPCを閉じてしまったのだ。
完全に、自分のミスだった。
健太:申し訳ありません……!
健太:完了報告メール、失念しておりました。
健太:すぐに再アップロードと謝罪対応を行います。
鈴木:もういい。俺がやる。
鈴木:月曜朝から、一番やっちゃいけないミスだ。
鈴木:君は、始末書と再発防止策を出しておけ。
その冷たいテキストが、健太の胃をキリキリと締め付けた。
グループの他のメンバーは沈黙している。
課長と部長のアイコンが、静かに“既読”を増やしていることが、何よりも恐ろしかった。
意外な同期からの告白
もうダメだ。 信用は失墜した。
電車が駅に着き、人波に押されるようにホームに出たところで、スマホが再び震えた。
今度は、同期の田中からだった。
田中:ごめん!!!!!!!!!!
田中:ごめんマジで!!!!!
何事かと、健太は足を止めた。 田中からのメッセージが、個人チャットではなく、さっきの「営業二課 共有」グループに連投される。
田中:鈴木リーダー! 佐藤! マジですみません!
田中:俺のせいです!!!
グループが、一瞬でざわめいた。 「?」スタンプがいくつか飛ぶ。
鈴木リーダーが反応するより早く、田中が続けた。
田中:佐藤が土曜に対応するって言うから、俺、金曜の夜に「土曜朝までに最新データに差し替えとくわ!」って言ってたんです!
田中:で、土曜の朝、俺、寝坊して……
田中:佐藤が作業した14時より後、16時頃に、俺が慌てて金曜の古いデータのまま上書きしちゃいました……!!
健太は、自分の目を疑った。
どういうことだ。
つまり、健太が土曜14時にアップロードした「正しいデータ」は、その2時間後、田中によって「古いデータ」に上書きされていた……?
鈴木:…田中さん。
鈴木:つまり、佐藤さんの納品は正常に行われていて、あなたがそれを無断で、しかも古いデータで上書きしたと。
鈴木:そういうことか?
グループの空気が凍りついたのが、画面越しに伝わってきた。 既読は「13」になっている。
田中:はい……。
田中:佐藤はちゃんとやったのに、俺が寝坊して、慌てて、確認もせずに……。
田中:佐藤、本当にごめん!!!
健太は、呆然としながらも、指が動いていた。
健太:え、じゃあ俺、ちゃんとアップできてたってことですか…?
健太:(ログを慌てて確認する)
健太:あ……確かに、土曜14:03にアップロード成功のログ、あります。
鈴木:………。
長い、沈黙。 その沈黙を破ったのは、意外にも、今まで沈黙していた部長のスタンプだった。 「(呆れた顔の猫)」
鈴木:……佐藤さん、すまなかった。早とちりした。
鈴木:今朝の君への叱責は、すべて撤回する。
鈴木:始末書は、田中さん。君だ。
健太は、駅のホームの真ん中で、全身の力が抜けていくのを感じた。 危うくスマホを落としそうになる。
鈴木:田中さん。月曜朝9時、会議室。俺と部長と、○○○○マート様への謝罪方法を詰める。
鈴木:佐藤さんは、通常業務に戻ってくれ。…いや、本当に悪かったな。
田中:はい!!!!(泣き顔のスタンプ)
健太:いえ、とんでもないです!
健太:報告メールを怠ったのは事実ですので、そこは深く反省します!
グループには、他の同僚たちから「佐藤くん、お疲れ…」「田中、お前www」といったフォローのスタンプが並び始めた。
健太は、安堵のため息を一つ吐き、足早に会社のゲートへと向かった。 月曜の朝は、まだ始まったばかりだ。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
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※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。
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