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空港で彼を待ち続けた私、搭乗ゲートで声をかけてきたのは見知らぬ男性だった【短編小説】

空港で彼を待ち続けた私搭乗ゲートで声をかけてきたのは見知らぬ男性だった短編小説

2人の記念日、彼を空港で待っているはずだった

二人の記念日を祝う、初めての海外旅行。
私は、恋人の圭太との待ち合わせのため、浮き立つ心で空港にいました。

しかし、約束の時間を過ぎても、彼は現れません。

「遅れてるのかな」と最初は楽観的に考えていたものの、一本の電話も、メッセージの返信すらないまま、時間だけが過ぎていきます。
胸の中に、じわりと黒い不安が広がっていくのを感じました。

やがて、私たちが乗る便の最終搭乗案内がアナウンスされます。
もう、彼が来ないことは、明らかでした。

ドタキャンというより、音信不通。
理由もわからないまま、私はたった一人空港に取り残されたのです。
涙が溢れそうになるのを必死にこらえ、震える足で搭乗ゲートへと向かいました。
一人でも行くしかない。そう自分に言い聞かせながら。

ゲート前の椅子に座り、俯いていたその時です。

声をかけてきた人の正体は

「あの、すみません。もしかして、結菜さんですか?」

優しい声に顔を上げるとそこには見知らぬ男性が立っていました。

「はい、そうですけど…」

「僕、蓮と言います。圭太の、友人で…」

蓮と名乗る男性の言葉に私は耳を疑いました。
彼は気まずそうに、そして申し訳なさそうに、衝撃の事実を告げたのです。

「圭太から、急に仕事で行けなくなったと連絡があって…。チケットが勿体ないから、代わりに僕が行くことになったんです。あいつ、結菜さんには、連絡してなかったんですか…?」

怒りよりも先に呆れて、言葉も出ませんでした。
彼は、私に別れを告げるどころか、その役目と航空券を見ず知らずの友人に丸投げしたのです。

目の前には人の良さそうな蓮さんが、ただただ恐縮しています。
彼もまた、板挟みになった被害者なのでしょう。

夢にまで見た記念日旅行は、こうして出発前に終わりを告げました。
隣の席に座るはずだった恋人は、もういません。
代わりにいるのは、今日初めて会った、彼の友人。

これから始まるのは、甘いロマンチックな旅なんかじゃない。
あまりにも皮肉で、奇妙な、忘れられない旅になることだけは、間違いなさそうでした。

 

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【編集部注】

本記事は、旅行におけるトラブルをテーマにした創作の小説であり、登場する人物や出来事はすべて架空のものです。記事内で描かれているトラブルへの対処法は物語上の演出であり、同様の対応を推奨するものではありません。

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