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「来週は歓迎会だ!当然、全員出席な!」強制的な飲み会の誘い。しかし、上司の不器用すぎる本音に、思わずクスッとさせられた夜

「来週は歓迎会だ!当然、全員出席な!」強制的な飲み会の誘い。しかし、上司の不器用すぎる本音に、思わずクスッとさせられた夜

鳴りを潜めた昭和のノリ

「すっかり飲み会も減って、いい時代になったよな」

世間の風潮も手伝って、うちの職場からも厄介な「飲みニケーション」の文化はすっかり薄れつつありました。

40代に突入した私としても、定時でサクッと上がり、自宅のソファで羽を伸ばすのが至福の時です。

しかし、そんな現代の空気を微塵も察知しない男が一人。私の直属の上司である部長です。

「来週は新人の歓迎会だ! 当然、全員出席だからな!」

夕暮れ時のオフィスに、鼓膜を揺らすような大声が響き渡ります。

周囲の同僚たちはキーボードを叩く手を止めず、モニターを見つめたまま、一様に重いため息をこぼしました。

「えっと、部長。その日はどうしても外せない先約がありまして……」

若手の一人がおそるおそる申し出ると、部長は心底信じられないといった顔で眉をひそめます。

「おいおい、新しい仲間を囲む大事な日だぞ? それくらい調整してこその社会人だろうが」

こう畳み掛けられては、もう反論の余地はありません。

結局、フロア全体に諦めムードが漂ったまま、重い足取りで当日を迎えることになりました。

いざ宴が始まれば、最初の数十分こそ穏やかでしたが、ジョッキの数が増えるにつれて部長のエンジンがかかり始めます。

「ほら、グラスが空っぽだぞ。もっと周りをよく見ろ」

若手が慌ててビール瓶に手を伸ばすと、それを合図に“終わらないマウント”の幕開けです。

「俺たちの若い頃はな、徹夜で飲んでそのまま始発で出社するのが普通だった。最近の奴らはタイパだのなんだの言って、気合いが足りん。なぁ、お前もそう思うだろ?」

急に話を振られ、私は曖昧な愛想笑いを浮かべるしかありません。

「ええ、まあ……今は昔とは違いますからね」

「そこが甘いんだ!お前の先月の数字だってそうだ。俺が40代の頃は、今の倍はガツガツ取ってきたぞ。スマートぶってるから、泥臭さが足りないんだよ」

主役であるはずの新入社員は完全に蚊帳の外。

ひたすら自分の武勇伝と部下への説教をローテーションし、気持ちよさそうにグラスを空ける部長。

同僚たちの顔には愛想笑いが張り付き、テーブルの下で何度もスマホの時計を確認しています。歓迎されているはずの新人に至っては、所在なげに俯くばかりです。

「いいか、俺の背中を見てしっかり学べ! それが一番の近道だぞ!」

上機嫌で響き渡る部長の高笑いをBGMに、私は胃薬を飲みたい衝動に駆られていました。

見え隠れした不器用な素顔

宴もたけなわを過ぎ、部長の目元がすっかりトロンとしてきた頃でした。

突然、部長は手元のグラスを見つめたまま、ポツリとこぼしたのです。

「……実を言うとな、俺も今の若い連中とどう接していいか分からなくてな。つい自分の昔話に逃げちまうんだよ」

予想外の言葉に、私は思わず部長の顔をまじまじと見つめ返しました。

「え……?」

「今の若手が優秀なのは分かってるし、お前の効率の良い仕事ぶりも大したもんだと思ってる。けど、俺には昔ながらのやり方しか染み付いてないから、ついつい上から目線で口出ししちまうんだ。……カッコ悪いよな」

そこにあったのは、いつもの威圧的な上司の顔ではなく、時代の変化に取り残された戸惑いを隠しきれない、少し寂しげな表情でした。

「なぁ、お前も呆れてるだろ?」

自嘲気味に私を見るその視線は、まるでこちらの顔色を窺うような、ひどく不器用なものでした。

私はハッとしました。この人は決して意地悪な「悪役」ではなく、ただコミュニケーションのアップデートが追いついていないだけの、不器用で寂しがり屋なおじさんなのだと。

「時代は違っても、部長が現場で泥水すすって培ってきた経験から盗めるものは、ちゃんとありますよ」
私がそう返すと、部長は鼻をすすりながら、少し照れくさそうに笑いました。

帰り道、少し冷たい夜風にあたりながら駅へと向かいます。

「次は誰の送別会だったかな。またあの長い武勇伝を聞かされるのか……」
正直なところ、飲み会自体への億劫な気持ちは変わりません。それでも、あの不器用すぎる歓迎の気持ちの裏側を知れたことで、少しだけ心が軽くなったような気がしました。

思わず、暗い夜道で一人クスッと笑ってしまいました。

誰も悪くない。ただ、伝え方の形が少しズレていただけなのかもしれない。そんなふうに思えた、不思議な夜でした。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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GLAM Lifestyle Editorial

編集部

日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。

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