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試着室から30分出てこない客「お客様大丈夫ですか?」と聞いてもシカト…心配で開けてみると【短編小説】

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
試着室から出ない客
アパレル販売員をしていて、これほど怒りと呆れを同時に感じた経験はありません。
あれはセール期間中の、とある忙しい土曜日のことでした。
20代前半くらいの女性のお客様が、両手いっぱいに商品を抱えて試着室に入っていかれました。
「持ち込み点数は5点まで」というルールがあるのですが、「友達と分けるから」と言われ、少し甘い顔をして通してしまったのが間違いの始まりでした。
それからなんと、30分が経過してもお客様が出てこないのです。
通常、試着にかかる時間は長くても15分ほど。
「もしかして、貧血で倒れているんじゃ…?」
私は不安になり、ドアをノックして声をかけました。
「お客様、サイズ感はいかがでしょうか? ご気分悪くないですか?」
しかし、返事はありません。
もう一度強くノックをして呼びかけましたが、やはり無視。
これはただ事ではないと思いました。私は先輩スタッフと相談し、中を見ました。
「お客様! 開けますよ! 失礼します!」
すると、そこには信じられない光景が広がっていたのです。
最悪な光景
試着室の狭い空間には、持ち込んだ洋服が散乱し、なんとお客様は持参した小型のリングライトとスマホスタンドをセットして、ポーズを決めていたのです。
「えっ…?」
私が絶句していると、お客様は「あーあ、今のテイク良かったのに。入ってこないでよ」と、悪びれる様子もなくスマホの録画を停止しました。
彼女は試着室を「無料の撮影スタジオ」として使い、何着もの服を着替えては、SNS用の動画や写真を撮りまくっていたのです。
さらに最悪なことに、フェイスカバーを使わずに着替えたのか、売り物の白いニットにはファンデーションがべっとりと付着し、襟元も無理に脱ぎ着して伸びきっていました。
結局、そのお客様には商品を買い取っていただき、厳重注意をしてお引き取り願いました。
「試着室は撮影スタジオではありません」 そんな当たり前の注意書きを、お店に貼らなければいけない時代になったのかと思うと、なんだか悲しくなりました。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。
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