Share
「この企画書はゴミだ」と捨てる部長。だが、取引先と練り上げた、合同企画と知り顔色が一変【短編小説】
INDEX

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
企画書をゴミ扱いする部長
「バサッ!」
乾いた音を立てて、私が数日かけて仕上げた企画書が床に散らばりました。
オフィスの床に無惨に広がる白い紙。目の前でふんぞり返っているのは、私の部署の部長です。
彼は私の提出した企画書をパラパラと数秒めくっただけで、鼻で笑いながら床に放り投げたのです。
「この企画書はゴミだ。こんなもの、会議に出せるわけがないだろう。やり直しだ」
部長はいつもそうです。
部下がどれだけ時間をかけてリサーチしても、自分のその時の気分だけで「ゴミ」と決めつけ、中身をまともに読もうともしません。
悔しさで唇を噛み締めそうになりましたが、私はぐっと堪えました。
なぜなら、今回の企画書だけは、いつものように泣き寝入りするわけにはいかなかったからです。
そして何より、この状況は私にとって「ある意味チャンス」でもありました。
私は散らばった紙を拾わず、そのまま静かに部長を見据えて言いました。
「部長、本当によろしいんですね? この企画書を『ゴミ』として破棄するということで」
「あ? 何度も言わせるな。そんなレベルの低いもん、時間の無駄だ」
実はこの企画書…
私はニッコリと微笑んで、スマホを取り出しました。
「承知しました。では、先ほどまで連絡を取り合っていた取引先の専務様に、そのままお伝えしておきますね。『部長がゴミだと判断されたので、御社と半年かけて練り上げたこの合同プロジェクトは白紙にします』と」
その瞬間、部長の顔からサーッと血の気が引いていくのが見て取れました。
「は……? 合同……? 取引先の専務……?」
「ええ。先日メールでお送りした通り、これは我が社にとって最重要顧客である企業様との、社運を賭けた共同企画です。部長、CCに入れたメール、読んでいらっしゃらなかったんですか?」
実は部長、普段から面倒な業務連絡メールをすべて未読スルーしていたのです。その怠慢が、まさかこんな特大の地雷を踏むことになるとは思ってもみなかったのでしょう。
「ちょ、ちょっと待て! 待ちなさい!」
部長は慌てて椅子から転げ落ちるようにして、床に散らばった企画書を拾い集め始めました。額には玉のような脂汗が浮かんでいます。
「いや、改めて見ると、ここのデータ分析なんて非常に斬新で……素晴らしい着眼点じゃないか! さすがだなあ!」
震える手で紙のシワを必死に伸ばし、へらへらと媚びるような笑みを浮かべる部長。
さっきまでの威厳はどこへやら、そのあまりに滑稽な姿に、私の胸の中に溜まっていたモヤモヤは一気に晴れていきました。
部下の仕事だからと適当に扱い、中身を確認もせずに否定することの怖さ。
身を持って学んでいただけて、本当によかったです。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。
Feature
特集記事

