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「留学?お金の無駄」娘の進路を阻む母親。娘が特待生になり全額免除になると、母が泣いたワケ【短編小説】
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本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
留学を無駄という母親
「留学したい」 そう母に打ち明けたとき、リビングの空気は一瞬で凍りつきました。
「留学?お金の無駄よ。バカなこと言わないで。そんな余裕、うちにあると思ってるの?」
母は私が用意したパンフレットを見ようともせず、冷たく言い放ちました。
確かにうちは裕福ではありません。
女手一つで私を育ててくれた母に、これ以上の負担はかけられない。
それは私が一番わかっていました。
でも、私の夢を「無駄」の一言で片付けられたことが、どうしても許せなかったのです。
「お金の問題なら、私がなんとかする」
その日から私は変わりました。
放課後の遊びも断り、睡眠時間を削って勉強に没頭しました。
目指すは、学費も滞在費も全額免除される「特待生」の枠。倍率は高いけれど、これしか道はありません。母を見返したい、その一心でした。
そして半年後。私の手元に届いたのは「合格」の通知でした。
その夜、仕事から帰った母に、私は合格通知を突きつけました。
「見て。特待生に受かったよ。学費も生活費も全部タダ。これなら文句ないでしょ?」 勝った、と思いました。これでもう、母に反対する理由はないはずです。
母の真意
母は無言で通知書を手に取りました。
私は母が驚く顔を想像して待ち構えていました。
けれど、ふいに母の手が震え出し、通知書の上にポタポタと雫が落ちたのです。 母は泣いていました。
「……お金のことじゃ、ないのよ」 母は絞り出すような声で言いました。
「あんたがいなくなるのが、寂しかっただけ。お金がないって言えば諦めると思ったの。遠くに行っちゃうのが怖かったのよ……」
その言葉を聞いた瞬間、張り詰めていた私の心も決壊しました。
「お金の無駄」という冷酷な言葉は、娘を手放したくないという、母の不器用すぎる愛情の裏返しだったのです。
いつも強気な母が、子供のように泣きじゃくる姿を見て、私の意地も消えてなくなりました。
「ごめんね、お母さん。……でも、ちゃんと帰ってくるから」
私は小さくなった母の背中を抱きしめました。
来年の春、私は海を渡ります。母の少し重たくて、温かい愛を胸に刻んで。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。
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