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「この席、荷物置いてるの」新幹線で座らせない老人。だが、乗務員のある正論に黙り込んだワケ【短編小説】
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本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
理不尽な老人
久しぶりの出張帰り、私はクタクタでした。慣れないヒールで足はパンパン。「早く新幹線で冷たいビールを飲みたい」その一心で、予約した指定席へ向かいました。
やっと座席に辿り着き安堵したのも束の間、そこには予想外の先客がいたのです。
窓側の席には七十代くらいの男性。そして私が座るはずの通路側の席には、彼の大きなボストンバッグがドカッと鎮座していました。
私は切符を確認し、声をかけました。
「あの、すみません。そこ、私の席なんですが……」
しかし男性は広げたスポーツ新聞から目を離さず、赤ペンを走らせながら面倒くさそうに言います。
「見りゃわかんだろ、この席、荷物置いてるの。今、予想で忙しいから待ってろ」
耳を疑いました。ここは指定席です。
「すみませんが、どけていただけますか? 私も疲れていて」
食い下がると、男性は新聞をバサッと畳み、不機嫌に私を睨みつけました。
「最近の若いもんは気が利かねえな! 俺は腰が痛くて網棚に上げらんねえんだよ。年寄りを労われ!」
理不尽な怒号に周囲の視線が集まります。まるで私が悪いかのような空気にいたたまれなくなったその時。
乗務員の一言で形勢逆転
「お客様、どうなさいましたか?」
騒ぎを聞きつけた乗務員さんが駆けつけてくれました。
男性はここぞとばかりに「このねーちゃんが、腰の悪い俺に重い荷物を上げろと強要してくるんだ!」と被害者ぶって訴えます。
私は事情を説明しようとしましたが、乗務員さんは穏やかな笑顔で私を制し、男性に静かに言いました。
「腰がお悪いのは大変ですね。ところで、こちらの『お荷物』の乗車券と特急券は拝見できますでしょうか?」
「は?」
呆気にとられる男性に、乗務員さんは正論を突きつけます。
「お一人で二席を占有される場合、もう一名様分の料金が必要です。切符をお持ちでないなら、規定通りお荷物は網棚かお足元へ。それがルールですので」
男性は顔を真っ赤にして言葉を詰まらせました。
「チッ、融通の利かねえ会社だ…悪かったよ」
そう悪態をつくと、先程までの「腰痛」はどこへやら、軽々とバッグを網棚へ放り上げたのです。
その鮮やかな手のひら返しに、周囲からはクスクスと笑いが。
乗務員さんは私に深くお辞儀をして去っていきました。おかげで私は無事に座り、最高の気分で帰路につくことができたのです。
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※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。
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