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「会話聞こえてるぞ!」深夜、壁ドンする隣人。翌日ポストに入ってた、ある紙切れで事態が一転【短編小説】

壁ドンと怒号
憧れの一人暮らしを始めて一ヶ月。安さだけで選んだこのアパートが、まさかこんな「薄い」壁だなんて、住んでみるまでは思いもしませんでした。
それは、深夜0時を回った頃のことです。 なかなか寝付けなかった私は、ベッドの中で友人と通話をしていました。もちろん、近所迷惑にならないよう、声を潜めてヒソヒソと話していたつもりです。
会話が盛り上がり、私が小さく笑った、その時でした。
ドンッ!!
背中のすぐ後ろ、薄い壁一枚隔てた隣の部屋から、ものすごい衝撃音が響いたのです。まるで壁を拳で殴りつけたような音。心臓が跳ね上がりました。
さらに続けて、低い男の人の怒鳴り声が聞こえてきたのです。
「おい! 全部会話聞こえてるぞ!」
思考が真っ白になりました。
(嘘……そんなに声漏れてた?)
私は慌てて通話を切り、布団を頭まで被りました。心臓の音がうるさいくらいに鳴り響いています。壁の向こうの住人は、きっと凶暴な人に違いない。明日、顔を合わせたら何をされるかわからない。
(すみません、すみません……)
心の中で何度も謝りながら、その夜は恐怖で一睡もできませんでした。
隣人の正体
翌朝。
睡眠不足と恐怖で重い体を引きずりながら、私はゴミ捨てのために恐る恐る部屋を出ました。
(誰とも会いませんように)
そう祈りながら一階の集合ポストの前を通った時、自分の部屋番号のポストに、何かが挟まっているのが見えました。
それは、ノートを破ったような一枚の紙切れ。
震える手でそれを広げた瞬間、私の「恐怖」は「呆れ」と「安堵」へと一変しました。
そこには、殴り書きのような文字でこう書かれていたのです。
『昨夜は本当にすみませんでした。 私は劇団員をしている者です。今度の舞台で「神経質な誘拐犯」の役を演じることになり、深夜にヘッドホンをしてセリフの練習に熱中してしまいました。「会話聞こえてるぞ」というのは、セリフです。壁を叩いたのも演技です。 朝になって我に返り、隣の方を怖がらせてしまったのではないかと深く反省しています。本当に申し訳ありませんでした』
……セリフ!?
読み終えた瞬間、膝から力が抜けました。
私に向かって怒っていたわけじゃなかったのです。しかも「会話聞こえてるぞ」という言葉自体が、まさかのお芝居のセリフだったなんて。
昨晩の私の震えを返してほしい気持ち半分、なんだかおかしくてたまらない気持ち半分。
これからは壁ドンが聞こえたら、「あ、また練習熱心だな」と思うことにします。もちろん、こちらの話し声が本当に聞こえてしまわないよう、私自身も気をつけるつもりですけれどね。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
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※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。
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