Share
「貧乏人ほど文句が多いのよね」と言ってたママ友がこっそりアルバイトをしていた意外なワケ【短編小説】

いつも余裕なママ友
「貧乏人ほど文句が多いのよね。余裕がないから、すぐ文句が出るのよ」
いつもきれいな服装で、持ち物もいわゆる「良いもの」を持っている彼女。公園のベンチで、他のママたちと談笑している時も、彼女は少しだけ違う空気をまとっていました。
不満や愚痴が話題の中心になると、決まって彼女がそう言って話を終わらせるのです。
私は、そんなママ友が少し苦手でした。たしかに彼女の言う通りかもしれませんが、あまりにきっぱりと言い切る姿に、どこか冷たさを感じていたからです。
「きっと何不自由なく暮らしているから、そう思えるんだわ」と、心の中で少しだけ反発していました。
ファミレスで見た意外な横顔
そんなある日の午後、駅前のファミレスに立ち寄った時のことです。一人で遅い昼食をとろうと店内に入りました。
「……え?」
そこにいたのは、あのママ友でした。
いつもはきれいに巻いている髪を一つにまとめ、制服のエプロンをきびきびと着こなして働いているのです。いつもの余裕のある笑顔とは違う、真剣な「仕事の顔」でした。私は驚きのあまり、注文もそこそこに、彼女の動きを目で追ってしまいました。
彼女は私に気づいているのかいないのか、テキパキと仕事をこなし、他の店員さんとも笑顔で言葉を交わしています。
あの「貧乏人ほど」と言っていた彼女が、なぜ? ご主人の仕事がうまくいっていない? それとも、ただ社会と繋がりが欲しいだけ?
数日後、公園で偶然彼女と二人きりになりました。言い出そうか迷っていると、彼女の方から口を開きました。
「この間、ファミレスにいたでしょう? 気づいてたんだけど、忙しくて声をかけられなくて」
「あ、うん。びっくりしちゃって…」
私が言葉を濁すと、彼女はふうっと息を吐き、遠くを見つめながら話し始めました。
「私ね、実家とはずっと疎遠だったの。駆け落ち同然で結婚したから。でも、最近父が倒れて…」
彼女の話はこうでした。ご主人は今も安定した仕事をしており、生活に困っているわけではないこと。でも、厳格だったお父様の治療費が、保険適用外のものでかなり高額になること。
「夫に相談したら、もちろん『出そう』と言ってくれたわ。でもね、これは私の意地なの。ずっと反発してきた父だけど、最後の親孝行くらい、私が働いたお金でしてあげたいのよ」
彼女は、誰にも知られたくなかった、と言いました。ご主人のプライドも、そして彼女自身のプライドもあったのでしょう。
「『貧乏人ほど文句が多い』なんて、偉そうに言ってたわよね。あれね、本当は自分に言ってたの。文句ばっかり言って、結局何も行動してこなかった自分に。親不孝してきた自分に、一番文句を言いたかったのよ」
そう言って少しだけ笑った彼女の顔は、いつもの自信に満ちた彼女ではなく、一人の娘としての顔をしていました。
私たちは、人の一部分だけを見て、すべてをわかった気になってしまうことがあります。彼女がこっそりと守りたかったもの。それは、家族への深い愛情と、彼女自身の「意地」だったのです。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
******************
心に響くストーリーをもっと読みたい方 
【他のおすすめ短編小説を見る】
******************
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。
友だち登録&アンケート回答で「Amazonギフトカード」など好きな商品を選べるギフトを毎月抽選で5名様にプレゼント!
\ 今すぐ応募する /
Feature
おすすめ記事

