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あなたの選択で物語が変わる。『性格』を調整できるアプリ。あなたなら『感受性』をどうする?【短編小説】

あなたの選択で物語が変わる性格を調整できるアプリあなたなら感受性をどうする短編小説

感受性が豊かな私

「また、私が悪いのかな……」

深いため息が、マグカップの湯気と混じって消える。

WEBデザイナーの美咲は、またしても先輩の曖昧な指示のせいで発生した修正作業に追われていた。
断れず、強くも言えず、いつも他人の感情の波に飲まれて疲弊する。

「もう、こんな自分は嫌だ」

その夜、SNSの広告で『PersonaTune(ペルソナチューン)』というアプリを見つけた。

“AIがあなたの性格パラメータを最適化します”

“※ただし、『感受性』の設定は、一度決定すると元に戻せません”

美咲の手が止まる。
「感受性……。これさえなければ、もっと楽なのに」

彼女はアプリを開き、迷いながらも「感受性:80%」と表示されたスライダーに手をかけた。
ささいなことで傷つき、他人の機嫌に振り回される自分から、変わりたい。

彼女の指が、二つの選択肢の間で震える。

【あなたの選択】

A:感受性を「30%」まで、思い切り下げる

B:感受性を「60%」に、少しだけ下げる

 

 

 

Aパターン:感受性を「30%」まで下げる

『設定を更新しました。この変更は元に戻せません』

 

アラートが消えると、頭にかかっていた霧が晴れたようだった。

翌朝、職場は違って見えた。
先輩が曖昧な指示を出しても、「意図が明確でないので、具体的に指示してください」と冷静に返せる。
理不尽なことで上司に怒られても、心拍数ひとつ上がらない。
「はい、承知しました」
淡々とPCに向き直る自分に、少し驚く。

仕事は劇的に効率化し、残業も減った。周りからは「最近、頼もしくなったね」と評価される。

だが、数ヶ月が経った頃。
親友から泣きながら電話があった。「彼氏と別れた」と。
美咲は「そう。大変だったね」と答えた。頭では理解できるが、以前のように胸が締め付けられる感覚がない。
「……美咲、なんか、冷たくなった?」
戸惑う親友の声に、何も返せなかった。

大好きだったアーティストの新曲も、胸に響かない。映画を観ても、涙が出ない。
手に入れたのは、揺らがない平穏。
失ったのは、世界を鮮やかに彩っていた“何か”。

「これでよかった。私は強くなれたんだから」
そう言い聞かせた美咲の目に映る夕焼けは、ただの「オレンジ色の空」だった。

Bパターン:感受性を「60%」に留める

『設定を更新しました。この変更は元に戻せません』

 

アラートが消えても、劇的な変化は感じなかった。

翌朝、やはり先輩の曖昧な指示には少しイラっとした。
(でも、あの人も今忙しそうだしな……)
深呼吸を一つ。「この部分だけ、もう少し具体的に教えてもらえますか?」
以前より少しだけ、冷静に言葉を選べた。

上司の理不尽な叱責には、まだ傷つく。
けれど、以前のように一日中引きずることはなくなった。
「(言わせとけばいいか)」と、ランチのパスタを美味しく食べられるくらいにはなった。

数ヶ月後。
仕事の効率は、まあまあ上がった。相変わらず会議で気を使いすぎる自分もいる。

親友の失恋の電話には、一緒になって泣きそうになった。
でも、ただ同調するだけでなく、「あなたの気持ちもわかるけど、私はこう思うよ」と、少しだけ自分の意見を伝えられた。
「美咲に話してよかった。ありがとう」
そう言われた時、胸が温かくなった。

「結局、あんまり変わってないかも」
アプリに物足りなさを感じる夜もある。あの時、もっと大胆に変えるべきだったか?
でも、この痛みも、ささやかな喜びも、確かに自分の一部だった。

 

効率と平穏を選び、感動を失ったAの道。
劇的な変化はなくとも、痛みを抱えたまま人との繋がりを選んだBの道。

『PersonaTune』は、“理想の自分”を叶えるアプリではなかったのかもしれない。
それは、自分にとって何が不要で、何を失くしたくないかを突きつける、一度きりの選択だ。

もしあなたが、自分の一部を“元に戻せない”としたら。
何を調整し、何を残しますか?

 

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

 

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※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。

 

 

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