MENU

Share

「隣から自分の声で助けを求める声がするんです」信じてもらえない恐怖…あなたならどうする?【短編小説】

隣から自分の声で助けを求める声がするんです信じてもらえない恐怖あなたならどうする短編小説

引越し先で聞いた謎の声

「やっと片付いた…」

新しいアパートに引っ越してきて三日目。
引越し作業に疲れた私はソファに深々と身を沈めました。
都心から少し離れたこの街は、静かで住みやすそうなのが気に入っています。

紅茶でも淹れようかと立ち上がった、その時でした。

「助けて…!」

壁の向こう、隣の202号室から、くぐもった女性の声が聞こえたのです。
思わず動きが止まります。空耳…?いいえ、確かに聞こえました。

耳を澄ますと、また微かに聞こえてきます。

「助けて…誰か…」

その声に、私は背筋が凍るような感覚に襲われました。
なぜなら、その声は紛れもなく、私自身の声だったからです。

自分の声なんて、毎日聞いているからこそ分かります。
少し掠れた、特徴のある声。それが、壁一枚隔てた隣の部屋から聞こえてくるなんて。恐怖と混乱で、頭が真っ白になりました。

どうしよう。警察に電話?でも、なんて説明すればいいのでしょう。「隣から私の声で助けを求める声がするんです」なんて言っても、信じてもらえるはずがありません。

でも、放っておくわけにもいきません。私は意を決して、自分の部屋のドアをそっと開け、隣の202号室の前に立ちました。心臓が早鐘のように鳴っています。

コン、コン。

震える手で、ドアをノックしました。

「…すみません、どなたかいらっしゃいますか?佐藤です。お隣の…」

しかし、返事はありません。ただ、静まり返っているだけです。それでも諦めきれず、もう一度ドアに耳を当ててみました。すると、先ほどよりもはっきりと、あの声が聞こえたのです。

聞こえたのは私の声

「どうして、誰も助けてくれないの…」

それは、悲しみに満ちた私の声でした。

私はたまらなくなって、管理人である田中さんの部屋へ駆け込みました。事情を話すと、田中さんは怪訝な顔をしながらも、一緒に部屋を確認してくれることになりました。

「202号室は、先月退去されてから空室のはずですが…」

田中さんがマスターキーでドアを開けると、ひんやりとした空気が廊下に流れ出てきました。部屋の中はがらんどうで、家具一つありません。窓から差し込む月明かりが、埃っぽい床を照らしているだけです。

「ほら、誰もいませんよ。きっと聞き間違いでしょう」

田中さんがそう言って部屋の電気をつけた瞬間、私たちは部屋の奥にぽつんと置かれた一つのものに気づきました。

古びた、大きな姿見です。

なぜ、こんなものが。忘れ物でしょうか。私がその鏡に吸い寄せられるように一歩足を踏み出すと、田中さんが「危ないから」と私の腕を掴みました。

その時、鏡に映った自分の顔が、一瞬だけ歪んだように見えました。泣いているような、苦しんでいるような表情で、口が動いています。

『タスケテ』

声にはなりませんでしたが、確かにそう言っていました。鏡の中の“私”が、私に助けを求めていたのです。

私は短い悲鳴をあげて、その場にへたり込んでしまいました。

結局、その日は田中さんに付き添ってもらい、自分の部屋に戻りました。翌日、私はすぐにこのアパートの解約手続きを済ませました。

あの声は、一体何だったのでしょうか。そして、鏡の中にいた“私”は誰だったのでしょう。今でも、その答えは分かりません。ただ一つ確かなのは、あの部屋にこれ以上いてはいけない、という本能的な恐怖だけです。

 

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

【他のおすすめ短編小説】

 

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。

 

 

【GLAM公式LINE友だち登録キャンペーン実施中!】
友だち登録&アンケート回答で「Amazonギフトカード」など好きな商品を選べるギフトを毎月抽選で5名様にプレゼント!
\ 今すぐ応募する /

 

Gallery

SHARE !

この記事をシェアする

Follow us !

GLAM公式SNSをフォローする

Feature

おすすめ記事

Ranking