転職失敗でどん底だった私。でも、好きを追いかけたら依頼が殺到する人気デザイナーになった【短編小説】

自信を失った就活の日々

「ご期待に沿えず、誠に残念ながら…」

何度この言葉を聞いたでしょうか。新しいキャリアへの期待を胸に始めた転職活動でしたが、私の手元には一通の内定通知もありませんでした。

周りの同僚や友人たちはキャリアアップを成功させ、SNSには喜びの報告が溢れています。それに比べて私は、何十社も職務経歴書を送り、面接でこれまでの経験をアピールしても、送られてくるのは不採用を知らせる「お断りメール」ばかり。

もう、自分のキャリアは行き止まりなのではないかと、どん底の気分でした。

そんなある日、面接の帰り道、降り出した雨を避けるようにして一軒の小さなカフェに飛び込みました。
そこで店主の高橋さんと話すうちに、ポロリと転職活動の悩みをこぼしてしまったのです。
私の話を黙って聞いていた高橋さんは、美味しいコーヒーを淹れながら、こう言いました。

「あなたは、何をしている時が一番楽しいの？」

その一言に、私はハッとさせられました。転職活動に必死になるあまり、自分が本当に「好き」なことをすっかり忘れていたのです。
昔から絵を描いたり、何かをデザインしたりすることが大好きだったこと。

今の仕事への不満から、その気持ちに蓋をして、周りと同じように「安定」や「企業のネームバリュー」ばかりを追いかけていたことに気づかされました。

趣味が仕事になった瞬間

その日を境に、私の人生は少しずつ変わり始めました。

高橋さんのカフェのメニューやチラシを、趣味で描いていたイラストを活かして作らせてもらうことになったのです。心を込めて作ったデザインは、高橋さんにとても喜んでもらえました。

そして、そのチラシがSNSでお客さんの目に留まり、「このデザイン、可愛い！」と話題になったのです。

すると、信じられないことに、他の個人経営のお店からも「うちのデザインもお願いできないか」という依頼が舞い込むようになりました。
最初は小さな仕事でしたが、一つひとつ丁寧に取り組むうちに口コミで評判が広がり、今ではフリーランスのデザイナーとして生計を立てられるまでになりました。

転職活動に失敗したあの頃は、人生の終わりかのように感じていました。
でも、あの絶望があったからこそ、私は自分の「好き」と向き合い、自分だけの道を見つけることができたのです。

希望の会社からの内定は掴めませんでしたが、私は今、誰よりも充実した毎日を送っています。

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

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