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「非常ベルに触ったのはお宅でしょ」と疑われた私。だが押していたのは隣人の子供だった【短編小説】

非常ベルに触ったのはお宅でしょと疑われた私だが押していたのは隣人の子供だった短編小説

突然響き渡るマンションの非常ベル

私の名前は莉奈(りな)です。
私が住んでいるマンションは、築年数は古いものの、住人同士の仲も良く、静かで穏やかな場所でした。
あの日までは。

平日の昼下がり、自室で静かに読書をしていると、突如としてマンションの共用廊下にけたたましい非常ベルの音が鳴り響きました。
「ジリリリリリ!」
心臓が飛び跳ねるほどの音に驚き、何事かと慌てて玄関のドアを開けました。
すると、同じように何人かの住人が顔を覗かせています。

ベルはすぐに鳴り止みましたが、私の部屋の斜め向かいに住む田中さんが、すごい剣幕で私の方へ詰め寄ってきました。

「あなたでしょ!さっきベルの近くをうろちょろしてたの、私、見てたんだから!」

突然のことに、私は何が何だか分かりません。
「え?私ですか?いえ、ずっと部屋にいましたが…」

「嘘おっしゃい!どうせ買い物袋でもぶつけて鳴らしたんでしょ!正直に謝りなさいよ!」

田中さんは、思い込みが激しく、少し気難しいことで有名な方でした。
彼女は一方的に私を犯人だと決めつけ、廊下に響き渡る声で責め立てます。
他の住人の好奇の目に晒され、私の顔はみるみる熱くなりました。

非常ベルを押したのは…

私がどう反論しようかと言葉に詰まっている、その時でした。
「あの…田中さん、すみません…」

か細い声と共に、隣の部屋のドアがそっと開きました。
そこには、申し訳なさそうな顔をした鈴木さんと、その後ろに隠れてしくしく泣いている息子の健太くん(五歳)がいました。

鈴木さんは深々と頭を下げます。
「本当に申し訳ありません。ベルを鳴らしたのは、うちの息子なんです…」

一瞬、廊下がしんと静まり返りました。
鈴木さんの話では、ほんの少し目を離した隙に、健太くんが赤いボタンに興味を持って押してしまったとのこと。
大きな音に本人もびっくりして、ずっと泣いていたそうです。

田中さんは、泣いている健太くんと、呆然と立つ私を交互に見て、顔を真っ赤にさせました。
あれだけ大声で私を罵倒していたのが嘘のように、気まずそうに「…そう」とだけ呟くと、嵐のように自分の部屋へ戻っていきました。

人に疑いを向ける時、人はどれだけ確信を持っているつもりでも、それはただの思い込みかもしれない。
鈴木さんに何度も謝罪されながら、私はそんなことを考えていました。

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

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※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。

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